都知事選で失職した蓮舫氏(右)は、今回の参院選は全国比例で出馬。これまで着用していなかったタスキをかけて復帰戦に臨んだ(写真撮影:小川裕夫)
ラサール石井氏に対しても、「原作者の秋本治氏から許可を取ったのか?」「両さんを政治利用するな!」といった声が寄せられ、それらに配慮したのだろう。ラサール石井氏はこち亀との関連性を避けているように見えた。
ラサール石井氏本人も、その集票力に期待していた社民党にとっても、これは誤算だったことだろう。ラサール石井氏は当選し、社民党は辛うじて得票率が2パーセントを超えた。これにより社民党は政党要件を満たした。政党要件を満たすことで、引き続き政党助成金が支給される。
タレント候補からタレント議員へ
自民党から立候補した鈴木大地氏はソウルオリンピック金メダリストという部分がフィーチャーされたが、初代スポーツ庁の長官を務めた経験があり、ほかのタレント候補とは少し毛色が異なる。
それでも総決起大会にはバルセロナ五輪の金メダリスト・岩崎恭子氏や北京とロンドン五輪の2大会に出場した伊藤華英さんなどが応援に駆けつけるなど、タレント候補として武器を存分に活用していた。
国民民主党から東京選挙区で立候補した牛田茉友氏は元NHKアナウンサーということもあり、ファンと思しき人たちがアイドルの親衛隊さながらに街頭演説を追っかけ続けていた。
牛田氏は街頭演説で聞き取りやすい声や演説をする際の表情にも配慮が見られ、そのふるまいは有権者を魅了する力があった。取材として政治の現場にもよく足を運んでいたことは演説内容からも窺い知れたが、それでも具体的な政策までは踏み込めておらず、そこに新人候補特有の弱さを感じた。
新人候補は有権者に実績を提示できない。それはタレント候補も同じだが、知名度があるゆえに街頭演説などで立ち止まってもらいやすい。立ち止まってもらうことは選挙に立候補している者にとって第一関門でもある。その立ち止まってくれた人に政策を語りかける。そして耳を傾けてもらうことを積み重ねていくことで支持が拡大する。
タレント候補は、その第一関門を突破しやすいので有利とされるが、前述したように当選後は元タレントであったがゆえに政治以外の話題で騒がれる。落選すれば、「知名度だけで当選できるわけがない。政治を舐めるな」といった批判にさらされる。タレント候補が内包する知名度は諸刃の剣でもある。
今回の参院選で当選してタレント候補から晴れてタレント議員となった彼ら・彼女らがどんな活躍を見せるのか? その評価と審判は6年後に下されることになる。
東京ドームに足を運ぶ野球観戦者にグータッチをしながら支持を呼びかける須藤元気氏(写真撮影:小川裕夫)
ソウル五輪の金メダリスト・鈴木大地氏(左)の総決起大会では、バルセロナ五輪の金メダリスト・岩崎恭子氏(中央)と北京とロンドンの2大会に出場した伊藤華英氏(右)が応援に駆けつけた(写真撮影:小川裕夫)