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韓国の医療ツーリズム、初めて年間100万人を突破──計画を3年前倒し、日本から来訪急増、皮膚科と美容医療がけん引し過去最多に 韓国保健産業振興院が2025年7月にインバウンド最新情報を公表

韓国最高裁がカンナビジオール(CBD)を大麻類と明確化(Sipa USA/時事通信フォト)

韓国の医療ツーリズムが急成長を遂げている(Sipa USA/時事通信フォト)

 韓国の医療ツーリズムが急成長を遂げ、2024年には海外からの来訪者が初めて年間100万人を突破した。美容医療などがけん引し、日本人が急増した。

 韓国保健産業振興院(KHIDI)が2025年7月29日に発表した。

釜山や済州も増加

・訪韓医療ツーリズムが過去最多:2024年、韓国を訪れた外国人医療利用者は117万人。日本からは44.1万人、前年の135%と大幅増。
・皮膚科が圧倒的な人気:診療分野では皮膚科が56.6%(約70.5万人)を占め、前年のほぼ2倍(194.9%)と急増。形成外科や内科を大きく上回る。
・地方都市の受け入れも急成長:ソウルが全体の85.4%(100万人)を占める一方、釜山や済州など地方でも医療インバウンドが急伸。観光と医療の融合が影響。

 韓国保健産業振興院が公表した「2024年 外国人受療者統計分析報告書」によって詳細を明らかにした。

 2024年、韓国を訪れた医療ツーリズム利用者は117万人に達し、過去最多を記録した。なかでも日本からの来訪者は44.1万人、台湾からは8.3万人に上り、前年比それぞれ135%(1.35倍)、550%(5.5倍)となった。

 診療分野別では、皮膚科の利用が全体の56.6%を占め、およそ70.5万人に達した。前年比で約2倍(194.9%)という急増となった。形成外科(11.4%)、内科(10.0%)を大きく引き離している。

 韓方医学も84.6%の伸びを示し、短期的な美容施術に加え、長期間をかけて取り組む医療も人気を集めている。

 地域別では、ソウルが依然として主な受け入れ地となり、全体の85.4%に相当する100万人を集めた。一方で、地方都市の伸びも目覚ましく、釜山では前年比133.6%、済州では221.0%を記録した。

 観光資源と専門医療の組み合わせが、地方での医療インバウンドを押し上げている。

目標を大幅に超えた

・政府目標を大幅に上回る実績:韓国政府の目標は2027年に年間70万人だったが、2024年時点で117万人を達成し、3年前倒しで目標超え。
・利便性向上と制度整備が奏功:出入国手続きの簡素化や施設整備、産業支援など、多角的な取り組みが受療者増加に寄与。
・量から質へ、観光との相乗効果も:実績の積み重ねで技術向上・低価格化・新技術導入が進み、観光と組み合わせた医療体験が人気。今後はサービスの質がより重要に。

 韓国政府は2023年に「外国人医療利用者誘致促進戦略」を掲げ、2027年までに年間70万人の来訪を目標としていたが、その1.6倍に当たる117万人を3年前倒しで達成した形になる。

 同政府は、出入国手続きの簡素化や混雑緩和、関連した産業の支援、施設の環境改善など、利便性と満足度を高める多面的な取り組みを進めてきた。

 韓国での順調な医療ツーリズムの伸びが記録される中、韓国は付加価値税の還付を2025年をもって終了するとされている。テレビ朝日系の報道では、2025年8月にあらためて終了の方針が伝えられた。目標達成をきっかけに、2016年から始めた特例措置は制度としての役割を終えたと判断される可能性がある。ただ現地報道を見ると依然として還付の継続を求める声は強く、過去6回期限が延長された経緯から再延長に傾く可能性もある。

 ヒフコNEWSで韓国のレポートを出しているが、実績の多さから技術が向上し、低価格、新しい技術の導入などの背景で、人を集めている。施術に合わせて体験できる韓国観光も人気だ。量と合わせて質の向上が一層重要になってくると考えられる。

 日本でも医療ツーリズムを進める動きはあり、韓国の状況から得られるところは多くありそうだ。

参考文献

세계가 찾는 K-의료, 외국인환자 100만명 시대 개막

韓国政府がメディカルツーリズムのブーム後押し、2027年に70万人の計画発表、美容医療などハブ目指す

韓国美容医療はなぜ進んでいるのか?コスパだけで決めない視点、専門性と症例数が築く信頼、BBクリニック表参道院長 白夏林氏に聞く

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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