川中さんが集めている政治家パンフレットのコレクションの一部(『日本中学生新聞』より提供)
生徒会長選挙で2度敗北、ライバルは「野球部キャプテンの彼女」
──将来の夢はやはりジャーナリストですか。
「やっぱりジャーナリストは格好いい職業だと思うし、憧れます。でも、政治家にも興味があります。僕は現職の生徒会長なのですが、当選するのが本当に大変で……」
──普段は選挙を取材する側ですが、学校では選挙に出る側だったんですね。
「はい。中学校に入学してすぐに立候補して、生徒会長になりました」
──えっ。中1からずっと生徒会長なんですか。
「ずっとではないです。中1の前期と中2の後期、そしていまの中3前期の3回、生徒会長を務めました。学校ではスマホが禁止されているので、いつも『スマホ自由化』が生徒会選挙の争点になるのですが、中1の時は候補者が乱立して票が割れたのと、『スマホ自由化』にくわえて『生徒会のオープン化』も訴えて当選できました。
陽キャとか陰キャって言い方はあまり好きじゃないけど、いわゆる陰キャのサイレントマジョリティーの人も意見を出しやすいように目安箱を設置しようと訴えたら、受かりました。入学以来ずっと立候補しているのですが、実はものすごいライバル候補がいて2回落選しているんですよ」
──“選挙マニア”の川中さんを破るなんて、どんな候補だったんですか。
「1つ上の先輩女子なのですが、その方が野球部キャプテンの彼女で、女子にも男子にも人気がある先輩でした」
──あはは、それは強そうですね。
「そうなんですよ! 中1の後期、中2の前期の連続して敗れてしまいました。彼女の組織票にはどうしても勝てなかったですね……。中2の後期の時はその先輩は立候補できず、後継候補と争ったのですが、僕は『今回勝てなかったら引退する』と宣言して、背水の陣で臨みました」
──いつかの選挙戦でも聞いたような言葉ですね……。
「僕は本気でした(笑)。対立候補は同級生のブラスバンド部の女子でした。僕もその子と仲が良かったし、女子の間で人気も高い子だったので、ちょっとやりにくかったですね。選対本部長の友人と選挙戦をどう戦うか話し合って、立会演説会で笑いを取る作戦を考えました」
──どんな作戦を練ったんですか。
「やっぱり争点は『スマホ自由化』なんですよ。現状、学校の中だけでなく、登下校中も電源をオフにしてカバンにしまっておかないといけないルールになっているんですが、僕はせめて登下校中はスマホを使えるようにしたかったんです。
そこで演説中にスマホを持ち出して訴えようと。絶対に生活指導部の先生が出てくるはずだけど、ダミーのスマホだったら笑いが取れるんじゃないかと思って」
──確かに注目が集まりそうなパフォーマンスですね。
「僕の友人にスマホを持つことを頑なに拒否している人がいて、iPhone14と同じ大きさの“ナイフォン”を自作して持っているんです。それを借りて、スマホケースに入れて演説中に出したら、予想どおり生活指導部が食いついて壇上に現れた。『これはアイフォンじゃなくて“ナイフォン”です!』って言ったら予想通り大爆笑が起きました。このおかげもあり、大差で当選できたんです(笑)」