広陵高校「暴力事案」と「出場辞退」をめぐる経緯
「偶発的事故だった」と説明
B氏は2年生に進級する同年4月に転校。新しい高校で同年に公式戦に出場した記録がある。
日本高野連が定める「大会参加者資格規程」では、転入後1年は公式戦に出場できないが、例外規定として〈止むを得ず転入学したと認められるもので、本連盟の承認を得たものはこの限りではない〉とされている。冒頭のA君もそうだが、転校後すぐに公式戦に出られるのは、学校と高野連が暴力などの問題を認めているからだろう。
B氏の父親が振り返る。
「暴行を受けた息子の身体の跡を見た医師からは『被害届を出したほうがいい』と言われました。それで学校側と『警察に報告して表に出すか、暴力を認めての転校とするか』を話し合った。結果、転校後にすぐ試合に出られるかたちになった」
転校する被害生徒にとって、新しい環境ですぐに公式戦に出られることはプラスだろう。ただ、結果としてそうした対応を繰り返し、野球部の問題が放置されてきた面もあるのではないか。
B氏はこう呟いた。
「今回の子(A君)が転校先で僕のようにちゃんとした高校生活を送れることを祈るばかりです。中井監督がまだ指導を続けると、こういう生徒がまた増えると思います。ちゃんと問題を認めて謝罪会見を開き、潔く辞めてほしいと思います」
広陵に問うと、B氏への2015年の暴力問題については「存在しません」とし、「自主練習中の偶発的事故により頭部を打ち、車椅子生活であった時期がある」と回答。双方の主張は食い違うが、B氏の転校については、「時期が異なる2016年の暴力事件の被害を受けたことがきっかけ」であり、日本高野連からは処分を受けたと説明した。
中井監督は堀校長による出場辞退会見には姿を見せず、その後も広陵は監督が公に説明する場を設けていない。中井監督の携帯を何度も鳴らしたが、反応はない。
当然ながら、これは中井監督個人の問題ではないだろう。10日の会見では堀校長が、自身が務めてきた広島県高野連副会長を辞任することを発表。
暴力事案の発生に際して、学校側には都道府県の高野連への報告義務がある。堀氏が報告する側の学校長と、報告を受ける県高野連の副会長職を兼ねていた環境下で、A君の暴行事案は処理された。その構造も被害者側の不信を増幅させた。
県高野連幹部でもある立場で中井監督を続投させてきた堀校長はその責任をどう捉えるのか。広陵に問うと、「広島県高野連には多くの役員がおり、利害関係のある特定の役員の意向を反映することはできないものと考えております」とした。
A君の父が改めて語る。
「中井監督には自らの言葉での謝罪会見を開いてほしい。息子のような事件が二度と起こらないことを願っています」
このままでは、同様の問題が繰り返されることにならないだろうか。
(前編から読む)
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号