野村流「弱者の兵法」も
実は名将・野村克也氏に重なるとの声もある。野村氏はデータを駆使するID野球の一方、阪神監督時代には「新庄は宇宙人」と称しつつも、投手との“二刀流”に挑戦させるなどして発奮させた。新庄監督もそうした人心掌握術に長けている。
「開幕ローテ入りして結果を出した北山はシーズン中に異例の背番号変更を敢行。『57』から看板選手がつける『15』に変更すると、次の登板では8回無失点。野手陣にも論功行賞で日替わり打線を組み、“初球のストライクをヒットしたら次にスタメンで使う”と公言。ファーストスイングの意識が高まった。じっくり待つタイプの清宮が初球を打つようになってレギュラーに定着するなど、選手を次々と覚醒させている」(前出・担当記者)
日本ハムOBで、阪神コーチとして駆け出し時代の新庄監督を指導した柏原純一氏はこう言う。
「野手は調子のいい者をうまく組み合わせ、連戦では休ませる。個性を生かし、選手も意気に感じて戦っているでしょう。これはノムさんの影響が大きいと思う。奇想天外に見えてデータの裏打ちがあるし、戦力が揃っていないチームで勝つためには、ノムさんが実践してきた“弱きを知り、弱者として歩む”という弱者の兵法を手本にすることが、成功への最短距離とわかっているのでは」
かつてID野球でヤクルトを率い、巨大戦力の巨人を倒した師のような結果を今季の日本ハムにもたらせるか。
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号