オフィスビルの冷房は部屋ごとに温度設定ができないものが多い(写真提供/イメージマート)
鉄道関係者のもとには「寒い」「暑い」といった、利用客からの意見やクレームが、この数年は特に多く寄せられているという。都内の私鉄幹部がいう。
「電車が寒い、というお客様は確かにこの時期多いですが、外気温によって個別に冷房の調整をしているわけではなく、多くのお客様が快適に過ごせる温度に設定しています。この時期、駅停車時のドア開閉などで熱気が車内に入り込み、車内温度を一定に保つのが難しいです。温度差が大きくなってしまうので、冷房が強めに感じられることはあるかもしれません。弊社でも編成ごとに、弱冷房車は導入しています。強冷房車というのは、現在のところ導入予定はないし、他社さんでも聞いたことがありません」(私鉄幹部)
さらに電車内以外の場所では、寒い、暑いを巡ってトラブルに発展している例もある。あるテレビ局で、本社屋内の空調管理などを担当する総務部社員が打ち明ける。
「大きな社屋は、ごく一部を除いて館内の温度は一定に保たれています。特に今年の夏は外気温が暑く、社内のあちこちから暑い、冷房を強めろ、といったクレームが届きます。今年、猛暑日が続いたことで、設定温度を少しさげたのですが、その途端、今度はあまりに寒すぎる、というクレームが殺到したんです」(テレビ局総務部社員)
暑い部屋は強めに、涼しい部屋は弱めに冷房を設定できれば良いが、ビルの構造上、それは不可能だ。かつ、両者からのクレーム量がほぼ「拮抗」しているために、頭を悩ませている。
「ある女性社員からは、寒すぎて何度も風邪をひき、通常の業務ができないと泣きながら訴えられました。テレビ局ですから、社内には完全デスクワーク派と、スタジオなどを動き回る派がいて、そこでも意見が分かれやすい。寒いと主張する社員からは、会社が社員を病気にさせているという強硬な意見も出ているいるようですが、現時点でどうにもできません。早く秋になるのを待つしかない」(テレビ局総務部社員)
ビルの冷房の設定をきっかけに、あまりの暑さと寒暖差で体調を崩し、精神的に余裕をなくさせ、人間関係にまで悪影響が及んでしまっているのかもしれない。
就寝時のエアコン利用
一方、都内在住の専業主婦は、今年の暑さのおかげで、ついに夫が「就寝時にもクーラーをつけてくれるようになった」と喜ぶ。
「夫は70代で高齢だから、クーラーの冷気が体に悪い、風邪をひいて拗らせて死ぬ、とずっと言い続けてきた人。ただ、この数年の暑さは異常でしょ? 今まで、陽の高い時間しかつけていなかったのを、朝から夕方まではかけるようになったんです」(都内在住の専業主婦)