列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
気象庁が公開している観測史上最高気温の順位を見ると、1位から4位までの5地点がすべて、2025年に記録されていることがわかる。15位までをみると、1933年7月25日に山形市で観測された40.8度以外はすべて2000年代以降で、日本で言われてきた「暑さ」の常識が通用しなくなっていることが分かる。ライターの宮添優氏が、冷房の設定温度、使い方をめぐって生まれる軋轢についてレポートする。
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8月7日に立秋を迎えたのと同時に、全国各地で強い雨が観測され「猛暑日」がやっと途切れた。だが、たった数日であの暑さが再びやってきた。
「会社に着く頃には頭がフラフラしてしまって、そのまま医務室に直行したことも、この夏だけで数回ありますね」
千葉県在住の会社員女性は、都内の職場まで1時間弱かけて電車で通勤しているが、電車内があまりに寒く、かと思うと外に出れば灼熱という「寒暖差」の影響で、この夏だけで何度も体調を崩していると訴える。
「電車の冷房が強すぎて”弱冷房車”に乗ることもありますが、私と同じような人が多いのか、特に女性を中心にかなり混雑しています。混雑する朝のラッシュ時は、弱冷房車選んで乗るほどの余裕もなく、冷房の強い普通の車両に乗るしかありません。冷房の当たらない場所をキープできればいいですが、体が小さく、混雑の中で冷気の下に押しやられることもあるんです」(千葉県の会社員女性)
夏場は「寒い電車」対策のために、カーディガンを着用して乗車するようになったという女性だが、聞き取りを進めると「真逆の意見」も少なくない。
場所取りに負けてドア付近になると滝のように汗
「なぜ”強冷房車”がないのか、暑がりは皆がそう感じていますよね」
こう不満を述べるのは、埼玉県在住の会社員男性(30代)。男性も都内の職場に通うため、毎日片道1時間強を電車内で過ごしている。そして、これだけ暑くてもなお、普通の冷房車しかないという事実に疑問を抱いている。
「冷房から出てくる風にダイレクトに当たれる場所なんか大柄な男性や汗かきで取り合いですよ。場所取りに負けてドア付近に立つことになったり、直射日光の当たる窓側に着席したら最悪。駅に停車するたびに熱気が入ってきて、それだけで汗がブワーッと。気温が以前より高いんだから、もっと冷房も強くしないとダメでしょう」(埼玉県の会社員男性)