クマは鋭いツメと肉球を利用して木に登る(写真提供/イメージマート)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、クマとの遭遇について。
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「クマが上から降ってきた」。栃木県那須塩原市に住む男性K氏は、昨年、山中でキノコ採りをしていてクマに出会ったという。「突然のことだった。クマがいないか周りを警戒しながら採っていたんだが、頭上からクマが降ってくるとは想像していなかった」。この時K氏は、ブナの木の下でキノコを探していた。
K氏の上に降ってきたのは子グマだ。それは文字通り、降ってきたという。
「襲おうと飛び降りてきたのではなく、木を降りる途中で足を滑らせて落ちてきたという感じだった」。頭上の木の枝がガサっと大きく揺れた瞬間、見上げる間もなく、丸まった黒い物体が目の間にドサッと音を立てて転がったのだ。
「クマだ!と思った瞬間、やられると思った」。子グマとはいえクマはクマだ。そのクマがK氏の目の前にいた。
クマよけに爆竹を持ち、背中にしょっていた竹籠の中に手製の短いヤリを持っていたというK氏。
「慌てて起き上がった子グマと目が合った。だけどオレは動かなかった。怖かったがジッと動かず、声も出さず、子グマを睨んだ」。K氏を見た子グマの目はおびえたように見えたという。
「しばらく見合っていたら、子グマの方が背を向けて逃げていったんだ。木登りしながら遊んでいたのか、母クマが登らせていたのか、それともドングリを食べていたのか。オレはそれに気が付かず、木に近づいたんだろう。もし樹上にいたのが母グマだったら、オレはその場で殺されていたな」(K氏)
「あそこで慌てて大声を出し、子グマを威嚇していたら…竹籠からヤリを出そうと動いたり、子グマにヤリを向けていたら…。近くにいただろう母グマに確実に襲われていたと思う。あまりに突然のことで、本当は驚いて身動きできなかったんだが、それがよかったんだろう。急な動きや大声はクマたちを驚かせる、襲われる危険が増すんだ。子グマがやられると思った母グマは、容赦なく人間に向かってくる。親子連れのクマはおっかないからね」とK氏は振り返る。
「キノコ採りに夢中になっていると、下ばかり向いているから、近くにクマがいても気が付かないことがある。数メートルという距離で遭遇しても背中を向けて逃げてはダメ。急に立ち上がってもダメ。ゆっくり後ずさりするのがいいと言われるが、足場の悪い山の中で、クマを見ながら後ずさりすれば転ぶだけだ。転べばクマに襲われる。じっと我慢してやり過ごすしかない。クマに出くわした友人はそうやって助かった」とK氏。