行方不明だった埼玉県の女子高生がコンクリート詰め遺体で発見された東京都江東区若洲の埋立地=1989年3月30日(共同通信)
ほかの連中も前後不覚の振りをして、誰ともなく女性のからだを触ったり、抱きついたりしていた。女性は怖がって逃げまわっていた。
Aが女性の足に抱きついて倒すと、女性はひときわ大きな悲鳴を上げた。Aはカズキに命令した。
「ボサッとしてんじゃねえよ。なにかで押さえろ」
カズキは言われるままに、近くにあったクッションを女性の顔に被せ、押さえつけた。女性はクッションの下でくぐもった悲鳴を上げた。
騒ぎを聞きつけたのだろう。Cの父親が二階に上がってきた。ドアの向こうで父親の声がした。ドアには鍵がかかっていた。しかし、父はドアノブに手をかけようとはせず、ドアの向かう側で声を発した。
「いま、悲鳴みたいなのが聞こえたぞ。なにやってんだ」
「うるせえな。なんでもねえから、下行けよ」
すぐさまCが怒鳴ると、父はそれ以上は追及せずに降りていってしまった。
ここでAとBが怒りだした。父親が来てしまったのは「(女性が)声をだしたせいだ」と難くせをつけ始めたのだ。二人は「おまえ、声だすんじゃねえよ!」とふとももを中心に足のいたるところを殴りだした。女性は恐怖のあまりだろう、身がすくんでしまい、もがくのも、声をだすのもやめ、殴られるままだった。
信じがたい凌辱行為がはじまったのはそこからだった。Aらは女性の下半身の衣服だけを取り、ボールペンやオロナミンCの瓶、マッチ棒を性器に突っ込み、カミソリで陰毛を剃るという行為を始めたのだ。香水を性器に塗るなどの行為もおこなわれた。
カズキは「始めは興味半分で見ていた」が、だんだんと「ひでえなあ」と心の中でつぶやくようになり、かわいそうに思えてきたという。
カズキは女性の表情をよく覚えている。彼女は放心状態でまばたきもしないで、天井の一点を見つめていた。
「おまえらもやれ」
Aが命令した。
「いえ、いいですよ」「やですよ」と、カズキとヒロは拒んだ。
「てめえら、ふざけんじゃねえ!」
Bがスニーカーを手に持って振り上げ、2人にぶつける真似をした。
カズキたちはなにか言い訳はないものか考えたが、「ムリですよ」「勃たないですよ」ぐらいのことしか言えない。
そうこうしているうちにAはポルノ写真雑誌を持ってきて、「用意しとけ」と命令口調で言った。いやだ。やりたくない。カズキはねばって、断り続けた。