特殊詐欺や闇バイト禁止とされているが……(写真提供/イメージマート)

特殊詐欺や闇バイト禁止とされているが……(写真提供/イメージマート)

下劣な犯罪の根絶に寄与する事

 特殊詐欺への関与は厳禁のはずの山口組でも、そうした犯罪を行う者は後を絶たない。2025年5月には警視庁暴力団対策課により、特定指定暴力団山口組系組長ら4人が特殊詐欺容疑で逮捕された。医者や息子を装い、東京都内に住む90代男性に電話をかけ、現金300万円を詐取。同様の手口による被害は2024年だけで約80件、約3億円の被害額が確認されたという。逮捕された組長は、被害者から現金を受け取る「受け子」グループの統括役だったという

 だが六代目山口組は、組員ならやるべきことが違うと言いたいようだ。通知された厳守事項2にあるのは「山口組組員は各々の若者に周知徹底を図り、このような下劣な犯罪の根絶に寄与する事」。悪の道に迷い込み、進もうとする若者らに真っ当な道を歩むように教え諭すことを組員に指示したのだ。”各々の若者”とは組員と親交のある者や関わりのある者かと思いきや、その範囲はさらに広く「組に関与していない者だと思う」と元組長はいう。

「今さらだけどね」と元組長が言ったのは、「掛け子や最近のタタキは、その辺のガキがやってるから」だ。タタキとは隠語で”強盗”のことで、闇バイトで集められたとみられる若者による事件がここ数年目立っている。ヤクザらが若者を集めているかもしれないのに、道を踏み外しそうな若者を見かけたら、下劣な犯罪に手を染めないよう道を正してやれということらしい。ルフィー事件で世間が騒いでいた頃、「ヤクザにも表と裏、本音と建て前がある。悪は悪でも必要悪だと思われたい。社会からはみ出したような者を厳しい規律の中で統制することができるのが暴力団だったが、今ははみ出し者が多すぎる」と元組長は話した。

『特殊詐欺の「主犯」、暴力団が4割 組織トップへの民事提訴も相次ぐ』という記事が出たのは、2022年10月20日の朝日新聞のオンライン版。警察庁によると2017年~2021年の5年間で、特殊詐欺にの主犯として摘発された281人のうち125人、44.5%が暴力団構成員や準構成員らだったという。

 特殊詐欺に関与、首謀する組員が多いのか、卑劣な犯罪と周知徹底する組員が多いのか。シノギと組のルールを天秤にかけても、暴力団が稼げなくなった社会情勢や組織の上納システムを考えれば、天秤はシノギに傾くだろう。

 7月には岐阜で、特殊詐欺で得た犯罪収益と知りながら現金を受け取ったとして、山口組系組長と組幹部らが組織犯罪処罰法違反の疑いで岐阜県警に逮捕された。受け取った現金は8万円。外道の行いはなくならない。

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