カザフスタン初の関取、前頭八・金峰山(左/時事通信フォト)
9月14日が初日の大相撲9月場所で期待がかかるのが、大の里の横綱としての初優勝だ。8年ぶりの日本出身横綱に立ちはだかる力士たちに注目が集まるなか、有力視されるのが外国出身の力士たちだ。
その筆頭格であるはずの先輩横綱でモンゴル出身の豊昇龍は、『大豊時代』を築くと期待されながら7月場所は2日目から3日連続で金星を配給。横綱在位3場所で2度の休場に追い込まれ、横綱昇進が時期尚早との批判の声が再燃する。
不振に喘ぐ豊昇龍に代わって注目されるのが、ウクライナにいる家族と離れて力士となった安青錦だ。7月場所では史上最速の12場所目での金星を豊昇龍から挙げ、大の里と並ぶ新入幕から3場所連続2ケタ勝ち星を達成している。
「ウクライナの大学への進学が決まっていたが、両親と一緒にドイツに避難。力士への夢を捨てることができず、世界ジュニア相撲大会で来日した時の縁を頼って安治川部屋に入門した。
柔道、レスリングの経験があり、頭を低く下げてアゴを上げないレスリングスタイルが相撲で生かされている。過去の名力士の研究が日課。鮮やかな内無双を決めるなど相撲と真摯に向き合っている」(相撲記者)
令和の海外出身力士は、高校で相撲留学として来日後、大学の相撲部を経て入門するパターンが多い。しかも学生横綱などの実績を残し、幕下や三段目付け出し格などでデビューしている。
モンゴル出身の欧勝馬と阿武剋は日体大に進んで学生横綱となった。
学生時代に大の里に完勝
欧勝馬は大の里の2学年先輩にあたり、同級生の阿武剋は4年時の全国学生決勝で大の里を破って学生横綱に輝いている。
「ともに幕下15枚目格付け出しでデビューすると、欧勝馬は所要4場所、阿武剋は3場所で十両に昇進した」(相撲記者)
阿武剋と高校、大学が同じモンゴル出身の旭海雄は、付け出し資格がなかったことで前相撲からスタートしているが、それでも所要11場所で十両に昇進している。
「日体大時代に大の里としのぎを削ってきた欧勝馬、阿武剋、旭海雄は手の内を知り尽くしている。ライバルの日大からカザフスタン初の関取となった金峰山も、学生時代の大の里との対戦成績は5勝2敗と相性が良い。いずれの力士も体格的にも劣らず、プロでもライバル関係が続くのでは」(若手親方)
現在、7か国25人の海外出身力士が在籍し、モンゴル出身以外も幕内や十両で活躍している。安青錦と同じウクライナ出身の獅司は世界選手権3位の実績を持つ。狼雅はロシア出身、大青山は中国(内モンゴル)出身だ。
もちろん幕内に5人いる最大勢力のモンゴル出身力士(総勢19人)も、40歳の鉄人・玉鷲や白鵬二世といわれる聖白鵬、玉鷲の義弟・玉正鳳、豊昇龍と同じ飛行機で来日した朝白龍などの活躍が期待される。
10月には34年ぶりのロンドン公演を控え、海外人気も高い。幕内力士の4分の1が海外出身となり、切磋琢磨するからこそ9月場所は面白くなる。