凶行に及んだ橋本被告
水洗トイレを流すために母の許可が必要
その後は、弁護人が請求した、同じく橋本被告と面談等を行った臨床心理士に対する尋問が行われた。
まず「WAIS」という知能試験の結果が明らかにされた。スコアの平均が100のところ、橋本被告は73と低く、またスコアの出来不出来が通常の人より大きいという。合理的に計画を立てるのが苦手、相手がどう思うかを考えた上で発言するのが苦手だという。
橋本被告はプロ棋士時代に対局に負けて、Aさんに「死にたい」と漏らしたことがあったという。橋本被告としては当然死ぬつもりなどなく、すごく悔しい思いを表したかったが、Aさんがどう感じるかは考慮できなかった。なお、Aさんはその言葉に対し「死にたいなら、遺書書いて死んで」と答えたという。
さらに養育環境に話が及ぶ。
幼少期にいじめを受けていたというのは前述の通りだが、家では母からも暴力を受けていたという。肉体的な暴力に限らず、謝っても罵声を受け、入浴は3日に1回、15歳になると水洗トイレを流すには母の許可が必要になった。また両親が謎の宗教に傾倒し、金の棒や木の札に手を合わせて何かを唱えていたという。
心の支えは将棋だったが、その対戦表を母にバラバラに破られたこともあった。そんな生活が嫌で、将棋に集中するために16歳で一人暮らしをする。また19歳のころには、母が勝手に家に入り、宗教グッズを置いて帰ることがあり、親に居場所を知られないように引っ越しをした。
臨床心理士は不適切な養育環境による影響を「紙をぐしゃぐしゃにして元に戻しても戻らないのと同じ」と表現した。両親の虐待により、自己評価が低く、感情のコントロールが困難だったと評価した。
更生には薬物のみでは限界があり、心理的アプローチ、医療的ケアの必要を説いた。