人口密度の高い地域と熊の生息域が近い日本は、世界で最もアーバン熊が発生しやすい国だという

人口密度の高い地域と熊の生息域が近い日本は、世界で最もアーバン熊が発生しやすい国だという

「熊密集地帯」ではこれまでの熊対策が意味をなさなくなる

 北海道での熊害(ゆうがい)は、環境省に正式に記録が残る1962年以降だけでも発生件数155件、死者59人、負傷者118人に及ぶ。様々な文献に記された明治時代からの記録を含めれば、死亡数は優に100人を超える。

 なぜこれほどの熊害が発生するのか。北海道というと、「広い大地」を思い浮かべるだろう。しかし、その広い北海道ですら、熊の生息数、土地の広さと人口数の比率で計れば、他国を大きく上回る「熊密集地帯」となっている。

 人口密度の高い地域と熊の生息域が日本ほど近い環境は、世界を見渡しても他に例がない。そのため、熊が餌にしているドングリなどの木の実が不作になり、食糧確保のために活動範囲を広げれば、熊はすぐに山を降りて人里までやってくることになる。

 それでも、かつては人里と熊の生息域の間には、薪や山菜を採るため適度に手入れされた里山があり、これが熊と人間の生活圏の間のワンクッションになっていた。それが現代は里山の開発が進んで人間が山際にまで住むようになった。あるいは逆に、放置された里山が雑木林と化して熊の生息域になったことで、さらに人間と熊の生活圏は近づいている。環境省の試算では、放置された里山は日本の国土の2割強に及ぶという。

 かつては狩猟や炭づくりのために山間に住む人々がおり、これを熊が恐れて山から降りてこないことがあったが、高齢化の影響などから山間で生活する人が減ってしまった。そうして熊が山から降りやすくなったのと同時に、人間のほうも山登りや渓流釣りなどレジャー目的で山に入ることが増え、人間と熊の遭遇する機会は増えていった。

 環境省の調査によれば、現在、日常的に人間が居住する住宅地や市街地や農地で起きる熊害の発生率は、すでに山林での熊害を上回っているという。熊と突然遭遇し襲われるケースの多くは、これまで山間部にかぎられていた。だが今後は人間の生活圏でも熊との遭遇が増えると予測される。

 やっかいなのは人里近くに生息する熊たちが、大きな物音や人間そのものを恐れなくなることだ。本来、熊は警戒心が強く、熊鈴などの音を鳴らせば接触を避けられた。しかし、人間の居住区と熊の生息域が隣接する日本の特殊事情によって、これまでの熊対策が意味をなさなくなる可能性が高いのだ。

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段通りの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
《名誉毀損で異例逮捕》NHK党・立花孝志容疑者は「NHKをぶっ壊す」で政界進出後、なぜ“デマゴーグ”となったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん
「今この瞬間を感じる」──PTSDを乗り越えた渡邊渚さんが綴る「ひたむきに刺し子」の効果
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン