通算勝利数は日本競馬史上10位で現役最多という名伯楽・国枝栄調教師
アパパネの4歳春はヴィクトリアマイルに照準を合わせた。前年の覇者で天皇賞(秋)も勝ち、ジャパンカップも1着で入線した1歳年上のブエナビスタが単勝1.5倍の1番人気。アパパネは前哨戦のマイラーズカップが4着だったこともあって4.1倍。ブエナビスタはもう5歳なので、勝つならここしかないと思って仕上げた。マサヨシ(蛯名正義騎手)も、負けてもいいから来るなら来いというような気迫でスタート、最後は詰め寄られて、なんとか残ったというところだけど、よく堪えてくれた。これがGI5勝目、そして彼女にとって最後の勝利となった。
この秋はエリザベス女王杯でまたもスノーフェアリーの3着、翌年のヴィクトリアマイルでもコンマ4秒差の5着に頑張ってくれた。どこが悪いというわけではないのだが、シャープさが影を潜めマイルドな印象になってきた。性格的にも若い頃は周りにチヤホヤされていたからか、獣医さんや装蹄師さんなどには反抗したりして、気に食わないことがあると機嫌が悪かったのが、あれっというぐらい穏やかになってきた。
年をとるにつれてお母さんになる準備をしていたのだろう。
【プロフィール】
国枝栄(くにえだ・さかえ)/1955年岐阜県生まれ。東京農工大学農学部獣医学科卒業後の1978年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。1989年に調教師免許を取得して1990年に開業、以後優秀調教師賞7回、優秀厩舎賞7回。主な管理馬はほかにブラックホーク、マツリダゴッホ、サークルオブライフ、ステレンボッシュなど。
※週刊ポスト2025年11月21日号
