2冠を達成したアパパネの思い出を振り返る
1978年に調教助手として競馬界に入り、1989年に調教師免許を取得。以来、アパパネ、アーモンドアイという2頭の牝馬三冠を育てた現役最多勝調教師・国枝栄氏が、2026年2月いっぱいで引退する。国枝調教師が華やかで波乱に満ちた48年の競馬人生を振り返りつつ、サラブレッドという動物の魅力を綴るコラム連載「人間万事塞翁が競馬」から、2冠になったあとのアパパネについてお届けする。
* * *
菊花賞に出走したアパパネの子アマキヒは11着。「調教師生活最後の年に初の牡馬クラシック制覇」とはならなかったけれど、こういう場に連れて行ってくれたことに感謝したい。本当によくなるのは来年以降なのだろう。
11月16日のエリザベス女王杯にも、桜花賞馬ステレンボッシュを出走させる。この馬の曾祖母はウインドインハーヘア、そう、アマキヒの父親ブラックタイドやディープインパクトなどのお母さん。その娘たちはレイデオロやアーバンシック、レガレイラなどを送り出しており、まさに華麗なる一族。ステレンボッシュも全体のフレームが伸びやかで皮膚が薄くとても雰囲気のある馬だ。ここのところの成績が今ひとつだが、体調は上向きなので期待している。
2010年の牝馬クラシック2冠を達成したアパパネの思い出に戻ろう。
オークスで同着優勝した後もずっと美浦にいたのだが、暑さにもへこたれないで飼い葉食いも落ちないから夏の間にどんどん成長してしまった。秋華賞トライアル、ローズステークスの時はオークスから24キロ増! さすがにレース前のインタビューでも強気な発言はできなかったけれど、ここまでGI3勝だから当然人気にはなる。単勝2.1倍で4着、ファンには申し訳なかった。
しかしこの一叩きで馬はグンとよくなったし、本番ではオークスを勝っているという自信があった。貫禄十分のレース運びで三冠を達成!
これなら、古馬相手のエリザベス女王杯も行けるだろうと思ったけれど、イギリスからやってきたスノーフェアリーの3着。この後香港カップで牡馬相手に勝ったような馬なので、これはしょうがないなあ。
