どこが「危険エリア」か
死者を含むクマによる人身被害が全国各地で相次いでいる。山間部だけでなく市街地にまで出没し、人間の生活を脅かしている状況が続くが、そんななか、AI(人工知能)を活用して「クマと遭遇しやすい場所」を割り出した研究者がいる。地形や環境データ、過去の遭遇情報などをもとにリスクを予測したそのマップが示す「危険エリア」と注意すべきこととは。【前後編の後編。前編から読む】
AI予測マップを開発したのは上智大学大学院の深澤佑介・准教授(応用データサイエンス学位プログラム)。かつて在籍したNTTドコモでは「人口統計データ」分析を手掛けていた。同マップでは、過去の遭遇記録に気象・標高・ブナの実の豊凶情報などの自然要因と、人口分布・道路の有無・土地の利用状況といった社会的・環境的要因をAIに学習させている。
「例えば自治体の発表するクマ遭遇の位置情報に、『土地被覆図』を重ねると、落葉樹が多い、湿地であるなど遭遇した場所の土地利用状況がわかります。それ以外にも道路の有無や人口密度、高齢化率などを組み合わせて、“人とクマが交わる場所”を導き出しています」(深澤氏)
AI予測は人の居住エリアを対象にし、1キロ四方ごとに遭遇リスク(クマとの遭遇確率)を5段階で評価している。日常的に人の気配がない山奥などは対象外だ。
そのうち、緯度・経度など遭遇地点が多い「秋田県」、人口密度の高いエリアと接する「札幌市」「東京都」のマップを見てみよう(実際の遭遇を示す×は9月末時点のもの)。
