中国の習近平国家主席(右)と握手を交わす二階俊博氏(2015年5月23日、中国・北京。写真/EPA=時事)
中国の“高市叩き”が止まらない。大阪総領事のSNSでの「汚い首は斬ってやる」投稿や中国外務省局長の「両手ポケット」交渉に始まり、国営中国テレビは高市早苗・首相の醜悪な風刺動画を放送。国連でも中国の大使がグテーレス事務総長に高市発言を非難する書簡を送るなど、居丈高な“戦狼外交”を展開している。そこまで強気にさせたのは、習近平・国家主席に媚び、屈してきた日本の政治家たちの歴史があったからではないか──。【全3回の第1回】
観光資源が“エサ”に
「日本は脅せばすぐ屈してくる」──中国の習近平・国家主席にはそんな対日外交上の成功体験がある。それを植え付けたのが日本の親中派と呼ばれる与野党の政治家たちだ。
ノンフィクション作家でジャーナリストの門田隆将氏は「媚中政治家には、中国に擦り寄って日本の国益を損なう政治家、中国の圧力に屈して唯々諾々と従う政治家、贖罪外交で中国の反日教育に加担する政治家の3つのタイプがある」と指摘する。
中国に擦り寄った政治家の代表格が日中友好議員連盟会長を長く務めた親中派の大物、二階俊博・元自民党幹事長だという。
二階氏は官民3000人規模の大訪中団を率いて幾度も訪中してきた。政界引退前の昨年8月にも同議連メンバーと5年ぶりに訪中し、王毅・外相との会談で日本から中国への修学旅行の推進を提案したが、日本産水産物の輸出再開や中国軍機の領空侵犯問題など日中間の懸案については目立った成果はなかった。
「パンダ外交」の推進役としても知られ、地元・和歌山のアドベンチャーワールドは1988年に中国からパンダ2頭が貸与されたのを皮切りに、最盛期(2012年)には9頭のパンダで和歌山観光の目玉にした。約30年間に17頭の繁殖に成功する実績を挙げながら、二階氏の政界引退と共に全頭が中国に返還させられた。
「中国に擦り寄り、そのパイプを地元対策になる観光資源のために最大限に利用してきた政治家でしょう。中国の言い分を物わかり良く聞き入れ、パンダをエサに中国にうまく利用されたとも言えます」(門田氏)
二階氏の後を継いだ日中友好議連の現会長が森山裕・前幹事長だ。今年4月に訪中して中国共産党序列3位の趙楽際・全人代常務委員長と会談。和歌山のパンダ返還を受けての新たなパンダ貸与を要請した。二階氏のパンダ外交も受け継いでいる。
総裁候補では林芳正・総務相も日中友好議連会長経験者だ。父の義郎氏(元蔵相)も同議連会長を務めた親子二代の親中派で、「単純な対中強硬姿勢はうまくいかないだろう」「日本と中国は切っても切れないほど絡み合っている」などと発言してきた。
「日中友好議連には日中国交正常化を行なった田中角栄・首相と大平正芳・外相の流れを汲む議員が多い。旧田中派は中国への援助事業にはじまり、対中国ビジネスに大きな利権を持ってきた。議連にはそうした人脈とビジネスが引き継がれてきたから、歴代会長は中国寄りの姿勢で、中国側も同議連を日本政府に自分たちの言うことを聞かせる代理人的存在として便宜を図ってきたわけです」(門田氏)
(第2回に続く)
※週刊ポスト2025年12月12日号
日本の尖閣諸島国有化に対する抗議デモ(2012年9月15日、中国・河南省。写真/AFP=時事)

