菅直人・元首相(右)、野田佳彦・元首相らの民主党政権時代も影響か(時事通信フォト)
中国の“高市叩き”が止まらない。大阪総領事のSNSでの「汚い首は斬ってやる」投稿や中国外務省局長の「両手ポケット」交渉に始まり、国営中国テレビは高市早苗・首相の醜悪な風刺動画を放送。国連でも中国の大使がグテーレス事務総長に高市発言を非難する書簡を送るなど、居丈高な“戦狼外交”を展開している。そこまで強気にさせたのは、習近平・国家主席に媚び、屈してきた日本の政治家たちの歴史があったからではないか──。【全3回の第2回。第1回から読む】
「脅せばいい」の成功体験
次は中国の圧力に屈した政治家たちだ。習主席にとって対日外交の重要な経験になったのが国家副主席時代の2010年9月に尖閣諸島で発生した中国漁船の日本の海上保安庁巡視船に対する衝突事件だ。
海保は中国漁船の船長を公務執行妨害で逮捕、勾留を延長して起訴に向けた司法手続きを進めた。それに反発した中国側は日本への中国人観光団の規模縮小、現地の日本企業の社員4人を拘束など次々と報復措置を取った。これに慌てた時の菅直人内閣は、仙谷由人・官房長官が主導して「超法規的措置」で中国人船長の釈放を認め、帰国した船長は「国家的英雄」として迎えられた。評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏が言う。
「中国の圧力に屈して検察が処分保留のまま船長を釈放するのを認めた当時の仙谷官房長官、それで解決を図ろうとした菅首相の対応が、習近平に“日本は脅せば言いなりになる”という強烈な成功体験を与えたのは間違いないでしょう」
その延長で起きたのが野田佳彦・首相による尖閣諸島の国有化だ。当時の石原慎太郎・東京都知事が寄附を集めて都が尖閣諸島を購入する計画を進めたことに中国が反発すると、野田首相は「中国側の反発を和らげるため」と2012年9月に尖閣の魚釣島など3島を地権者から国費で買い取り国有化した。元民主党幹部が舞台裏を打ち明ける。
「中国政府は日本側に非公式ルートで国有化すべきでない、大変なことになると伝えてきていたが、野田首相は楽観的に受け止めたのでしょう。石原知事が買うより政府が買ったほうが中国側は反発しないはずだと配慮したつもりだったため、報復措置への備えもなかった」
案の定、日本が尖閣を国有化すると、中国はテレビで尖閣特番を放映して国民の反日感情を煽り、反日デモが広がって日系企業への打ち壊しや放火が横行。日中関係は冷え込み、日本の経済的損失は数兆円とも言われた。
民主党政権は発足当初から米国と距離を置き、中国寄りの姿勢を取った。鳩山由紀夫・首相は就任すると日中韓を中心に経済圏と安全保障体制を構築する「東アジア共同体」交渉を提唱。外務大臣だった岡田克也氏も東アジア共同体構想では米国を加盟国にしない考えを表明し、日米関係が悪化するきっかけになった。
この鳩山内閣時代に起きたのが「天皇の政治利用」問題だ。習近平・副主席が来日する際、中国側は天皇との会見を求め、宮内庁が「1か月ルール」(※天皇と外国要人との会見は30日前までに宮内庁に要請するという慣例)を楯に反対したにもかかわらず、ちょうど中国を訪問して胡錦濤主席と会談した小沢一郎・民主党幹事長(当時)が鳩山首相に強く働きかけて天皇と習氏を特例会見させた“事件”だった。
習主席は民主党政権時代に日本の政治家のハンドリングの仕方を実地で学んだと言ってもいい。
(第3回に続く)
※週刊ポスト2025年12月12日号
日本の尖閣諸島国有化に対する抗議デモ(2012年9月15日、中国・河南省。写真/AFP=時事)

