ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(時事通信フォト)
ベネズエラのマドゥロ政権転覆も視野
トランプ大統領は、なぜカリブ海に浮かぶ小国に対してそこまでするのか。もちろん、国内に渦巻く物価高への不満を抑えるために国民の目を外に向けさせたいという思惑もあるだろうが、それだけではない。ベネズエラは石油埋蔵量約3000億バレルを誇る世界有数の産油国であり、化石燃料回帰を宣言しているトランプ氏にとってはアメリカの“庭先”にある巨大利権でもあるのだ。
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は反米主義者だった故ウゴ・チャべス大統領の薫陶を受けた労働運動活動家だ。米政府高官は匿名を条件に「我々にはすべての選択肢がある」と語った。トランプ氏は麻薬組織どころか、マドゥロ政権転覆まで視野に入れていることは容易に想像できる。軍事的選択肢には、麻薬組織の拠点の破壊、戦略拠点の破壊、一時占拠、マドゥロ政権転覆、海兵隊特殊部隊による軍施設、レーダー網などに対する攻撃などがあると見られている。
トランプ氏は、軍事力の行使は、あくまでマドゥロ政権が操る麻薬組織「カルテ・デ・ロス・ソロス(太陽のカルテル)」や「トレン・デ・アラグア(アラグア・ギャング)」など国家ぐるみの麻薬ネットワークを壊滅するためだとしている。それに対してマドゥロ氏は、「存在しない組織への誹謗だ」と強く反発し、「トランプは殺人者だ」と非難しているが、マドゥロ政権と麻薬組織には断ち切りがたい関係があることも事実だ。ある専門家は、「ベネズエラの麻薬組織は、ただ暴力や密輸だけでなく、貧しい地域で住民への恩恵(仕事、金銭、保護、地域支援など)をある程度与えてきた。だからベネズエラ政権による撲滅は不可能だ」と指摘する。
さらにマドゥロ氏が麻薬組織を容認する軍・治安機構、官僚、政府高官エリートによって支えられている面も否定できない。ベネズエラ内政に詳しい米主要シンクタンクの上級研究員はこう語る。
「マドゥロ氏は軍や治安機構の幹部に忠誠を誓わせ、反対するものは追放し、投獄するという強硬手段に出ている。トランプ氏がやっていることを真似しているのだ。トランプ氏がベネズエラの麻薬組織をぶち壊すということはベネズエラの政財官界エスタブリッシュメントを解体することを意味する」
