ベネズエラは長年にわたる経済崩壊と政治腐敗、そして麻薬組織との結びつきによって、国内の混乱は極限に達している(時事通信フォト)
後ろ盾には習近平・中国とプーチン・ロシアが
問題は、この対立が単なる独裁者同士のケンカでは終わらないことだ。ベネズエラが、ロシア、中国と准同盟国と呼べる関係にあるからだ。中国、ロシアは石油ビジネスと軍事支援によってマドゥロ政権を支え、中南米での影響圏の要としてきた。ベネズエラは長年にわたる経済崩壊と政治腐敗、そして麻薬組織との結びつきによって、国内の混乱は極限に達している。食料や医薬品の不足、極端なインフレ、暴力の蔓延──そこに中ロが食い込んで強固な関係を築いてきた。
「ロシアと中国は、ベネズエラを自国の戦略的拠点と位置づけ、経済援助や軍事顧問団の派遣を通じてマドゥロ政権を支えてきた。もちろん背景には原油・鉱物資源の権益確保の思惑があり、両国ともアメリカとの緊張が高まるなかで、ベネズエラが代理戦争の舞台となりうる危険な状態だ」(前出・シンクタンク上級研究員)
中国は伝統的に「主権尊重」「非干渉」を外交の柱としており、ベネズエラ情勢に関しても、習近平政権は今のところ「各国の内政に干渉しない」という基本スタンスを貫いている。だが、ベネズエラ危機はただちにパナマ運河に飛び火する。中国はパナマ運河に権益を持ち、経済、軍事の重要拠点と位置づけている。それは米中対立の大きなテーマでもある。
プーチン大統領率いるロシアもまた、マドゥロ政権に軍事顧問、経済支援などで関与してきた。こちらも表向きは虎視眈々と状況を見ているが、「マドゥロ氏が中国、ロシアと連絡を取り合っていることは間違いない」(米情報機関関係筋)という。
大げさではなく、ベネズエラは今「世界の火薬庫」となっており、世界大戦も絵空事ではない危険水域だというわけだ。それを考えると、米中ロそれぞれと深い利害関係がある日本政府の反応は薄すぎるのではないか。中南米の政治・麻薬問題と聞けば遠い話題と受け取られがちだが、原油価格の急騰や難民・移民問題、さらには国際秩序の不安定化は日本の経済や安全保障に直結する。日米関係に精通する米シンクタンク幹部はこうアドバイスする。
「日本にはすぐに直接的な関わりはないだろうが、高市早苗・首相がトランプ大統領との同盟関係を重視するのであれば、アメリカ国内の対麻薬・治安維持への協力や、麻薬組織に依存しているベネズエラのへの代替生計(職業訓練、マイクロファイナンス)を提供することくらいは視野に入れておくべきだろう。それを高市首相が公言する必要がある。無論、ベネズエラでの軍事衝突の回避を呼びかけるのが第一だが……」
高市政権が中国と対立し、日米同盟を優先してロシアとも対峙するというなら、ベネズエラ危機から目を背けることは許されないだろう。
◆高濱賛(在米ジャーナリスト)
