昔の恋人とよりを戻すなど、30歳の頃よりずっと楽しい50代!
何かと忙しい師走。だからこそ、日常を忘れるためのリフレッシュとして読書でもしてみては? おすすめの新刊4冊を紹介します。
『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』ジェーン・スー/光文社/1760円
2023年に50歳の誕生日を迎えた著者。昔はなりたい自分がテーマだったが、今は自分とどう折り合うかがテーマ。シミ取り、脂肪溶解注射、ボトックス、リニアハイフ(ナ、ナンですかこれ!?)など、美容医療ネタ満載なのは美容雑誌の連載だったため。楽しいガールズトークだが、何かすると悪目立ちした時代から何もしないと悪目立ちする時代になったのかと、これにはガクゼン。
「幸せだって大きすぎれば怖くなるもの」「適当でいいの、適当で」(シャールの言葉)
『女王さまの休日 マカン・マラン ボヤージュ』古内一絵/中央公論新社/1870円
インドネシア語でマカンは食事、マランは夜。アジアンリゾートのようなマカン・マランは「おねえ」のシャールが東京の路地奥で営むカフェ。今回の趣向は“旅するマカン・マラン”で、台湾の旅取材に挑むライターのさくら、留守を預かる真奈、珈琲豆農園を訪れ日台の秘めた歴史をかみしめるシャールなど、どの人物にも新たな変化の風が吹く。また会いたいな、数年後の彼らに。
自然の恵みをいただく日々の食事──という発想が悠久のスケールになる大型絵本
『山のフルコース』はらぺこめがね/小学館/1870円
著者は原田しんやさんと関かおりさんの夫婦イラストユニット。食べもの絵本の第一人者だが、今回は飛び抜けた迫力。山奥の隠れ家レストランを訪れたある男性。シェフお任せのフルコースで、食前酒、前菜と楽しみ、メインディッシュの頃はヒゲも髪ものび……。さてその素材とは? 時間と空間を描いた大型絵本。表紙の熟成ヒレ肉だと思ったものの正体に驚いてくださいね。
恐怖の存在だった父上が、頭を撫でてくれた幼い頃の「糠床かき混ぜ」の日
『母の味、だいたい伝授』阿川佐和子/新潮文庫/649円
娘手製のトウモロコシの天ぷらを、まずいといって吐き出し、翌日逝った父上。なんでも投入のカレーをおいしいと言い、4ヶ月後に逝った母上。母の料理ノートは行方不明だけれど、鶏飯など記憶で再現する“実家の味”は上出来。アニサキスにもメゲズ、いつ血管が詰まってもおかしくない状態にもメゲズ、今日も食い意地を張る阿川佐和子さんの愉快で豪快な食エッセイだ。
文/温水ゆかり
※女性セブン2025年12月18日号



