赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)

赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真はイメージ)

 この刑事事件は裁判員裁判対象ではないものの、公判前整理手続に付されている。現時点では、公判が開かれる見込みは立っていない。複数の裁判を抱える松井医師は、SNSアカウントも立ち上げ、自身の主張を発信している。

〈事実と異なる漫画やSNS上の虚偽情報が、特定医師個人に結び付けられて広まることには断固として立ち向かいます。 検証すらされていない医療事故。「一人の医師の技術不足」「リピート医師の存在」で終わらせようとする世の中に強く異議を唱えます。在職期間中には、SNSに書けない多くの場面に遭遇しました。

 直属の上司・現場にいた医療者・検証を怠った病院・患者救済制度の不備・地方の医療崩壊と過酷な外科医の労働環境・話題性だけで適当な記事を書く週刊誌・SNSでの過剰な社会的制裁など、問題点は広範に存在しています。このままで本当にいいのでしょうか〉(2025年9月13日 「脳外科医 竹田くんのモデル」Xアカウントのポストより一部抜粋)

 漫画『脳外科医 竹田くん』により社会が注目するに至った、赤穂市民病院での一連の医療事故。日本脳神経外科学会は2022年8月、赤穂市民病院に対して「医療安全管理体制に安全教育上の重大な懸念事項がある」として専門医訓練施設の認定を停止していた。期限は設けていなかったのだが、今年4月1日に、この認定停止が解除された。

 そんな赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めているものは『脳外科医 竹田くん』作者の親族が患者となった2020年1月22日の手術、一件のみ。複数の死亡事故を含む他の件は全て「医療過誤」だと認めていない。

(了。前編から読む

取材・文/高橋ユキ(フリーライター)

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