容疑者が住んでいた木造2階建てのアパート
事件の後日談「伊藤さんの父に泣いて土下座して…」
「妻の友達であり、うちの店員だった凜さんの父親は、娘が亡くなったことを次の朝まで知らなかったんです。現場検証などもあり、お父さんがご遺体に対面出来たのは、事件から1週間後でした。僕自身もお父さんがどこに住んでいるのかわからなかったので、実際にお父さんに会うまでにかなり時間がかかった。
お父さんに会った時には『お父さん、すみませんでした』と泣きながら土下座して謝罪しました。お父さんともたまに連絡を取りますが、まだ娘が亡くなったという実感がないようです。妻もそうですが、凜さんの殺され方は、特に悲惨だったから……。今も責任を感じています」
事件後には亡くなった竹内さんを悼み、全国から人が集まったという。
「お別れの会には、のべ500人も集まってくれました。僕が声をかけたのはごくわずかなんですが、周りの人が『奥さんのお別れ会だから』と声をかけてくれたようで、沖縄、北海道、岡山、大阪、千葉など全国からお別れの挨拶に来てくれました。
励ましの電話もたくさんもらいましたし、あらためて妻は多くの人に愛されていたんだなぁと実感しました。会場内に入るのに3時間くらい要した方もいたくらい、多くの人が顔を見せてくれました」
突然、愛する人を失ったことに夫は今も大きな喪失感のなかにいる。それでも、前を向いて少しずつ日常を取り戻そうとしているようだ。新しい店をオープンさせ、多忙な毎日を送っている。
「事件から5か月経って、ようやく普通の生活に戻れた気がします。でもまだ心の傷は癒えていない。今はひとりで子ども2人を育てながら毎日働いていて、朝・晩の食事も作っています。正直、1日2時間くらいしか寝られないときもある。
奥さんは気丈で、いい女でした。失った喪失感は大きいですが、周りの助けもあって、ようやく新しい店でまたがんばっていこうという気持ちになっています。これから裁判も始まりますが、ある程度の時間はかかるでしょうね。決着が着くまで、長期戦になることは覚悟しています」
深い後悔を滲ませながらも、新しい店を始めたことについては「妻もきっとそうしろと言っていると思う」と述懐した。
尊い命を身勝手な理由で奪った山下被告に、司法は今後どんな裁きを下すのだろうか──。
