藤本渚七段
先崎:棋士としては“AI逃げ切り世代”と自称している私でも、日常生活では1日何回か調べ物にAIを使っているくらいですから、AIネイティブにとっては仕事や私生活で使いこなすのは当然なのでしょうね。
葉真中:これだけ一般社会にAIが浸透した今、将棋界は人間とAIの未来の関係性を示すモデルケースになり得ると僕は思っています。人間を凌駕する将棋ソフトが登場した際、将棋界に不安と危機感を抱いた時期もありましたが、今の将棋ファンは以前より将棋を楽しんでいる。
先崎:形勢を示す評価値の存在は、いわゆる「観る将」の方々に将棋の新しい楽しみ方を提示しましたよね。
葉真中:おっしゃる通りだと思います。なぜAIとの共存が成立したかといえば、評価値が人間同士の勝負論を駆逐するものではなかったからです。僕らの世界で言えば、今のAIの文章力は作家に近づき、いつ超えてもおかしくないという現実がある。それでも人間が書く小説はなくならないし、価値も下がらない。むしろ楽しみ方が広がると考えています。
先崎:AIが示す指し手は人間のように固定観念がない分、古い世代にとっては独創的にも見える時があります。ただ、今後出てくる棋士たちは、そう感じないのかもしれない。
葉真中:何かオールド世代の代表のようなお言葉ですが、羽生世代もまだまだ「終わり」ではないですよね?
