間接加熱式の銅製ポットスチル。それぞれ2000リットル
熟成具合を言葉で表現するコツ
蒸留を終えたばかりのウイスキーは無色透明の液体だが、樽に詰められて熟成が進むほどに、色づき、樽の香りを帯びるようになる。肥土さんは、樽に小さな穴を開けて取り出したごく少量の熟成途中の原酒をチェックし、品質を確かめながら、ウイスキーを完成に導いていく。
「熟成には何年もかかります。チェックした人ごとに、香や味の感じ方、表現の仕方も異なります。だから、この原酒をこの樽で寝かせると何年でこうなる、ということを体系立てて理解するのがとても難しい。長い期間、味や香りを見続ける人がウイスキー会社には必要です。この酒質の原酒は3年経つとこう、5年経つとこうなる、ということが、実感としてわかる。これが難しい。それでも、過去のノートを見返したときに、ニューポット(最初の蒸留液)のときはこんな感じ、何年経つとこうなる、というのがわかってくると、これから何年か経つとどうなるかも想像できるようになります。私自身のテイスティングの能力は、バーのマスターやウイスキーの愛好家の方たちとグラスを傾け、互いの表現で味や香りを伝えることを積み重ねることで培われたと思います。たとえばバニラを感じるというときに、バニラエッセンスでわかる人もいれば、バニラのアイスクリームという表現に共感する人、シュークリームという言葉でバニラを思い浮かべる人もいる。互いに同じものを感じていることを実感するために、3つくらいの例を挙げて表現すると、よく伝わるということは、そうした経験から学んだことです」
肥土さんが人生を賭して造るウイスキーは、国内のみならず、海外でも高く評価された。ウイスキーの権威ある品評会である「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」で、「イチローズモルト&グレーン ブレンデッドジャパニーズウイスキー」のシリーズは2018~2021年の4年連続と2023年、2025年に世界最高賞を受賞した。これは、日本のウイスキーとしては初の快挙である。
