「酒と人生」連載第2回目は肥土伊知郎さんにうかがった
新年を迎え、家族や友人と親睦の乾杯をしたり、一人じっくりと盃を傾けながら抱負を考えたり。清々しい一年の始まりに酒があるのは、どことなく嬉しいことだ。
国際的にも大人気のウイスキー「イチローズモルト」の生みの親、肥土(あくと)伊知郎さんに、名酒の一滴一滴にかけた思いを聞いた。聞き手は酒場ライターの大竹聡氏。【前後編の後編】
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サントリーに約10年勤めた肥土伊知郎さんは、父が経営する酒造会社に帰ってきたが、江戸時代から続く造り酒屋はこの当時、苦境に陥っていた。主力製品は、パック入りの日本酒とペットボトル入りの焼酎など。他に、ウイスキーも製造していたが、時代は1990年代の末。日本酒も、ウイスキーも需要は細く、業績は低迷していた。
実は、サントリーを肥土さんが退職した頃、私はサントリーがバー向けに編集発行する雑誌『ウイスキーヴォイス』で記事を書き始めていた。若い頃の私は、居酒屋で焼酎ばかり飲んでいたので、なぜこの雑誌に誘ってもらえたのかよくわからないのだが、創刊3号あたりから23号くらいまで、毎号の特集を書かせてもらったことは私の人生にとってたいへん大きな出来事だった。それまで国産のブレンデッドとバーボンウイスキーしか知らなかった私が、シングルモルトを知り、カクテルを飲み、バーのなんたるかを学ぶことができた。30代の半ばを過ぎたこの頃以後、酒について書くことが急激に増えた。私の人生を変えた雑誌と言える。
