能登半島地震で倒壊した家屋。上から押しつぶされたように見える(2024年1月4日撮影)
いまこの瞬間にも、南海トラフ地震を起こすエネルギーが、地下深層にたまり続けている。政府が発生確率は「日々高まっている」と強調するなかで、前触れとも取れる地震が発生した──。
日本各地で震度3以上の地震が、今年に入りすでに19回も観測されている(1月12日現在)。昨年の同期間ではわずか2回だったこともあり、地震活動の活発化に、専門家たちは南海トラフ地震との関連性を危惧している。
島根県東部を震源とするマグニチュード(以下、M)6.4の地震が起きたのは1月6日の午前10時過ぎ。島根県と鳥取県で最大震度5強を観測し、14人が負傷。建物の破損や土砂崩れなどの甚大な被害が生じた。鳥取大学工学部教授で、強震動地震学が専門の香川敬生氏が解説する。
「前回の南海トラフ地震は、1944年(昭和東南海地震)と2年後の1946年(昭和南海地震)に起きました。昭和東南海地震の前年の1943年には、山陰地方の内陸を震源とする鳥取地震(M7.2)が発生しています。南海トラフで巨大地震が発生する前には、山口県北部から京都府の北部に至る広義の山陰地方の内陸で地震活動が活性化し、M6以上の地震が複数発生している。先日の島根・鳥取の地震はこれに該当する可能性があります」
南海トラフ地震は、100年から150年の周期で起こるとされている。過去には1944年の昭和東南海地震、その前が1854年の安政東海・南海地震、そして1707年の宝永地震が、日本列島に大きな被害をもたらした。
島根大学総合理工学部准教授で、地震地質学が専門の向吉秀樹氏も「1854年の安政東海・南海地震でも、それ以前に山陰地方で大きな地震が起きた記録が残っています」と語る。さらに1707年の宝永地震の前にも、現在の島根県の西部で、M6.6程度の地震があったとされている。
南海トラフ地震は、静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘沖に伸びるプレートの境界「南海トラフ」を震源域とする巨大地震だ。海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込むことで蓄積した“ひずみ”が、限界に達したときに陸側のプレートが跳ね上がり、M8〜9クラスの地震が起きるとされている。南海トラフから離れた山陰地方の地震を、南海トラフ地震の“前触れ”と捉えることができるのはなぜか。
「南海トラフ地震を引き起こす海側のプレートと陸側のプレートが噛み合っているときに力が加わる影響で地震が発生するのが、どうやら山陰地方の内陸地のようです。この地方でいくつか大きな地震が起きたということは、プレートの沈み込みが進んでいる可能性が考えられます」(香川氏)
実際、近年、山陰地方の内陸では大小の揺れが確認されてきた。
「過去の実績から考えても、山陰地方の地震は南海トラフ地震に関連した地震の1つであり、南海トラフ地震の発生が近づいていると言えます」(向吉氏)
東京大学名誉教授で地震学者の笠原順三氏は、南海トラフ地震の規模に関して、強い懸念を抱く。
「1944年の昭和東南海地震は南海トラフの東側を震源域として発生し、その2年後には西側が震源域になりました。東と西で2回に分かれて地震が発生したが、これから起こる南海トラフ地震は、約700kmにわたる震源域で同時に揺れる可能性があります。
というのも、2016年4月に三重県南東沖でM6.5の地震が発生した際、南海トラフが東西で分かれることなく広範囲で余震活動を続けたのです。かつて震源域を分けた境界が、現在はなくなっているのかもしれず、被害規模は想像を絶します」
