嘘つきだらけの居酒屋で繰り広げられる、怪しいクリスマスの夜の物語(公式HPより)
「嘘の裏の裏を読む」会話劇の妙
では『嘘が嘘で嘘は嘘だ』はどんな物語なのか。
生方さんはこれまで3作すべて会話劇メインの作品を手がけてきました。今作で描かれているのも、主人公の大森みつ子(菊地凛子)、浮気が原因で別れた元夫・小林幸助(錦戸亮)、自称・イケメン結婚詐欺師の中村信(塩野瑛久)、頭から出血している自称・刑事の並木正義(竹原ピストル)の会話劇。さらに幸助の不倫相手・与田真理子(中田青渚)も含めた5人が新潟の居酒屋「法螺吹き」で嘘にまつわる会話を交わす物語です。
息を吐くように嘘をつく幸助、嘘のスペシャリストである信、見るからに嘘くさい正義は、いかにもワケありの人物ですが、それを聞くみつ子にも嘘の影がチラホラ……。そこに店の近くで発生したひき逃げ事故のニュースが入ることで不穏なムードが加速していきます。
最大の醍醐味は、「第一印象や思い込みで、嘘と本当がひっくり返るかもしれない」という人間心理のあやうさ。第1話から「この嘘そのものが嘘かもしれない」「この嘘はやっぱり嘘だろう」などと発言の裏の裏を読むようなムードが漂い、「各話を通して重ねられた嘘が最後に1つの線で結ばれる」という結末が予測されます。
また、ラブ、サスペンス、ヒューマン、ホラー、シチュエーションコメディなどのさまざまなジャンルを混在させた不思議な作風も魅力の1つでしょう。30分×4話という密度の濃さも含め、生方さんとしても挑戦作であり、FODやTVerで会話内容を繰り返し見たくなるような中毒性を感じさせられます。
ちなみにフジテレビの日曜23時台は春からアニメ枠の『ONE PIECE』に戻ることが予告されています。今後も休止期間はFODで先行配信されたドラマが放送されるケースはあり得るのでしょう。いずれにしても『嘘が嘘で嘘は嘘だ』は今冬の隠れた名作候補だけにチェックしてみてはいかがでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
