『憤怒の人 母・佐藤愛子のカケラ』/杉山響子・著/小学館/1870円
【話題の書を読む】『憤怒の人 母・佐藤愛子のカケラ』/杉山響子・著/小学館/1870円
『九十歳。何がめでたい』の作家・佐藤愛子さんの娘、杉山響子さんが、現在102歳の愛子センセイの老いと認知症、濃密で強烈な思い出を余すところなく綴った本書について、阿川佐和子さんはこう評した。
「どうして文士とは、総じてワガママで変人なのか。そして、文士の子どもがこれほど酷い目に遭っているというのに、どうしてみんな笑うのか! まことに不可解!」
阿川さんの父親は作家・阿川弘之さん。父の数々の理不尽に遭ってきたことをエッセイで面白く綴っているほか、「文士の子ども被害者の会」と称して座談会を開いてきた。
本書でも、響子さんは文士の母・愛子センセイの《何度クソババア、と思ったかわからない》というワガママと変人ぶりをユーモラスに開陳している。例えば、「恋する怒りん坊」の一編。
《私が小学校の六年生の頃だったか、母は恋をしていた》
その人は「球界の紳士」と呼ばれた元プロ野球選手で、当時は某球団で監督をしていた。母娘で付けたあだ名は《Bちゃん》。
《母とBちゃんは四年ほども付き合っただろうか。/小学校を卒業したらいっそスイスの学校に留学したらどうだ、と唐突に母に海外留学を勧められた(アルファベットもろくに言えない私は顔面蒼白になった)こともあったし(中略)おそらく母は子供に邪魔されずBちゃんと二人きりの生活に浸りたかったんだと思う》
Bちゃんとの別れの後に響子さんが被った「酷い目」についてはぜひ本書で。「あとがき」でこう綴る。
《思い返せば毎週、毎週、小さな自分や若い母と再会するのは楽しかった。私と母が作り出したミルフィーユケーキは不格好だ。だが、こうしてみると味は決して悪くはなかったと思う》
※女性セブン2026年2月5日号
