スポーツ

阪神JFのウォーターナビレラには武兄弟と父の”歴史”が刻まれている

阪神競馬場のパドック

阪神競馬場のパドック

 競馬は血のドラマでもある。人にも馬にも織りなす物語がある。競馬ライターの東田和美氏が阪神ジュべナイルフィリーズを分析した。

 * * *
 新馬や未勝利を勝ったばかりの馬も出てくるこのレースで勝つ条件は、“完成度”ではなく“血統背景”だ。メディアでもさまざまな血統情報を伝えており、競馬の持つ奥深さを実感させてくれる。それぞれの記事にうなずきながら競馬の多様性を楽しめばいい。

 2歳牝馬チャンオピオン決定戦だけあって、辿っていくのが楽しいのはやはり牝系だ。ドラマチックな縁が馬券につながればたまらない。

 今回GⅠ牝馬の令嬢はいない。“華麗なる一族”の一員といえるのはまずナミュールだろうか。母サンブルエミューズは2歳9月にオープン芙蓉Sを勝ってオープン入り。2012年の阪神JFでは2番人気8着、年明けのフェアリーSで3着。2013年の桜花賞出走を果たし6着に健闘している。

 その母ヴィートマルシェは1勝のみだったが、サンプルエミューズの6年後に今年のヒロイン、BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌを産んでいる。ナミュールにとっては3歳年上、アメリカで活躍した憧れのマルシュ叔母さんというわけだ。なにしろひいおばあちゃん(曾祖母)がゴッドマザー、1997年の桜花賞馬キョウエイマーチ。大伯父には皐月賞2着のトライアンフマーチもいる一族だ。

 サークルオブライフの母シーブリーズライフは新馬勝ち後5戦目でオープンのクロッカスSを勝ち、トライアルを経て2013年桜花賞に出走している(12着)。つまりナミュールとサークルオブライフは母親が同じ歳でともに桜花賞に出走しており、それぞれの子供がGⅠに出走してきたということだ。ママ友がかつてのライバルだったってこと。人間だったら当人よりも母親の思いが強そうだが。

 ステルナティーアの母ラルケットは2007年の阪神JFに2戦2勝で出走しトールポピーの10着。クイーンCでリトルアマポーラの3着、アネモネSでソーマジックの8着。桜花賞には出られなかったが、いち早くGⅠ馬ステルヴィオを産んだ勝ち組ママ。

 抽選をくぐって出走してくるシークルーズの母ベストクルーズは2009年阪神JFでアパパネの3着、2010年秋華賞12着。

 今回出走馬のボトムラインを眺めていて懐かしい名前を発見した。ウォーターナビレラの母の母の母(曾祖母)がピンクノワンピース。愛馬にユニークで情緒あふれる名前をつけることで知られる小田切有一氏の所有馬だ。デビューは1989年2月の新馬戦。当時は前年の菊花賞、スーパークリークで初GⅠを勝った武豊騎手の人気が競馬界の枠を超えて沸騰中。19歳の天才騎手あらわる! と言われていたころである。

 若々しい武豊騎手にはピンクのワンピースを着た女の子が似合いそうだから、ぜひピンクノワンピースという名前の馬に乗ってもらおう。そう思って小田切氏が名付けたのがこの馬。「それ相応の馬でなきゃだめだというので、(中略)トウショウボーイの牝馬にしたんです」(「文芸ポスト」2004年春号)。そう、トウショウボーイといえば武邦彦騎手だ。

 調教師に頼み込み、新馬戦に乗ってもらうことになった。結果は惜しくも5着で、その後も2回乗ってもらったが、勝つことはできなかった。それでも小田切氏は「僕としては満足」。しかし武豊騎手は馬名の由来を「知らないんじゃないかな」とのこと(いずれも同誌より)。

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン