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阪神JFのウォーターナビレラには武兄弟と父の”歴史”が刻まれている

阪神競馬場のパドック

阪神競馬場のパドック

 競馬は血のドラマでもある。人にも馬にも織りなす物語がある。競馬ライターの東田和美氏が阪神ジュべナイルフィリーズを分析した。

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 新馬や未勝利を勝ったばかりの馬も出てくるこのレースで勝つ条件は、“完成度”ではなく“血統背景”だ。メディアでもさまざまな血統情報を伝えており、競馬の持つ奥深さを実感させてくれる。それぞれの記事にうなずきながら競馬の多様性を楽しめばいい。

 2歳牝馬チャンオピオン決定戦だけあって、辿っていくのが楽しいのはやはり牝系だ。ドラマチックな縁が馬券につながればたまらない。

 今回GⅠ牝馬の令嬢はいない。“華麗なる一族”の一員といえるのはまずナミュールだろうか。母サンブルエミューズは2歳9月にオープン芙蓉Sを勝ってオープン入り。2012年の阪神JFでは2番人気8着、年明けのフェアリーSで3着。2013年の桜花賞出走を果たし6着に健闘している。

 その母ヴィートマルシェは1勝のみだったが、サンプルエミューズの6年後に今年のヒロイン、BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌを産んでいる。ナミュールにとっては3歳年上、アメリカで活躍した憧れのマルシュ叔母さんというわけだ。なにしろひいおばあちゃん(曾祖母)がゴッドマザー、1997年の桜花賞馬キョウエイマーチ。大伯父には皐月賞2着のトライアンフマーチもいる一族だ。

 サークルオブライフの母シーブリーズライフは新馬勝ち後5戦目でオープンのクロッカスSを勝ち、トライアルを経て2013年桜花賞に出走している(12着)。つまりナミュールとサークルオブライフは母親が同じ歳でともに桜花賞に出走しており、それぞれの子供がGⅠに出走してきたということだ。ママ友がかつてのライバルだったってこと。人間だったら当人よりも母親の思いが強そうだが。

 ステルナティーアの母ラルケットは2007年の阪神JFに2戦2勝で出走しトールポピーの10着。クイーンCでリトルアマポーラの3着、アネモネSでソーマジックの8着。桜花賞には出られなかったが、いち早くGⅠ馬ステルヴィオを産んだ勝ち組ママ。

 抽選をくぐって出走してくるシークルーズの母ベストクルーズは2009年阪神JFでアパパネの3着、2010年秋華賞12着。

 今回出走馬のボトムラインを眺めていて懐かしい名前を発見した。ウォーターナビレラの母の母の母(曾祖母)がピンクノワンピース。愛馬にユニークで情緒あふれる名前をつけることで知られる小田切有一氏の所有馬だ。デビューは1989年2月の新馬戦。当時は前年の菊花賞、スーパークリークで初GⅠを勝った武豊騎手の人気が競馬界の枠を超えて沸騰中。19歳の天才騎手あらわる! と言われていたころである。

 若々しい武豊騎手にはピンクのワンピースを着た女の子が似合いそうだから、ぜひピンクノワンピースという名前の馬に乗ってもらおう。そう思って小田切氏が名付けたのがこの馬。「それ相応の馬でなきゃだめだというので、(中略)トウショウボーイの牝馬にしたんです」(「文芸ポスト」2004年春号)。そう、トウショウボーイといえば武邦彦騎手だ。

 調教師に頼み込み、新馬戦に乗ってもらうことになった。結果は惜しくも5着で、その後も2回乗ってもらったが、勝つことはできなかった。それでも小田切氏は「僕としては満足」。しかし武豊騎手は馬名の由来を「知らないんじゃないかな」とのこと(いずれも同誌より)。

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