「三権分立を壊すという、とんでもない政治を行なっている。国会軽視、官僚は萎縮、そして政権に対するチェック機能を潰してきた。あげく、司法にも人事で介入する始末。第4の権力とも称されるマスコミにも、圧力を加えてナアナアの関係を築いた。つまり、戦後の立憲主義を破壊した」
断わっておくが、本誌(2017年1月13・20日号)が実施した現役・OB政治家による「歴代最高の宰相」調査では、安倍首相は吉田茂、中曽根康弘、田中角栄という名だたる宰相に次ぐ4位に食い込んでおり、その評価は功罪相半ばしているといえる。
それでも多くの識者が「最低の総理」と見る理由に挙げたのは、政策ではなく政治手法だった。安倍政権が人事権を濫用して民主政治家としての“禁じ手”を使っていることだ。元NHK経営委員長代行の上村達男・早稲田大学法学学術院教授が語る。
「私の専門である組織論の観点から指摘すれば、安倍政権は内閣法制局長官、NHK会長などへの人事に介入し、自民党がこれまで恣意的な人事権行使を自制することで保たれていた権力のチェック機能を壊した。安倍政権をチェックするシステムをなきものにすることで批判をできなくしたのは民主主義を破壊する行為といっていい」
もうひとつは、森友・加計問題にみる行政ガバナンスの崩壊と政治の行き詰まりを招いたことだ。ノンフィクション作家の森功氏がいう。