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タモリ、赤塚不二夫、清志郎と付き合った男を嵐山光三郎解説

【書評】『今夜は最高な日々』(高平哲郎著/新潮社/1785円)装丁・装画/和田誠

かつて雑誌『宝島』の編集長だった高平哲郎氏との交遊を通して、作家の嵐山光三郎氏が、その「時代を見抜く勘」について解説する。

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高平哲郎が山下洋輔、坂田明、中村誠一、そしてタモリらとつきあいはじめたのは70年代である。その流れは赤塚不二夫をまきこんで80年代のバラエティー全盛時代に突入していく。

横澤彪プロデューサーとの連携でサブカルチャーの芸能をメインカルチャーに変えた手品師の総元締が高平氏である。ギンギンに凄腕で頭がキレル人物を想定するが、そのじつ温和で物静かで上品な紳士である。

高平氏はテレビ番組やステージの構成演出を手がけるいっぽう編集者であった。高平氏が雑誌「宝島」編集長だったころ、私も編集者だったからいわばライバルであった。手ごわい相手が現われたな、と用心していたのだが、その高平氏が構成する「笑っていいとも!増刊号」に出演して失業時代の生活を助けられた次第で、いわば私の恩人でもある。

この本に登場する人は、筒井康隆、篠原勝之、小野二郎、相倉久人、斎藤晴彦、忌野清志郎、日野皓正、春風亭小朝、林家三平、色川武大、桃井かおり、と多士済済で、その数は百名をこえるだろう。文庫本にするときは人名の索引を作っていただきたい。

驚くことは、高平氏が、時代の先端を行く人々のあいだをすりぬけていくバイタリティーである。疾走しつつマイナー系をメジャーに化けさせ、忘れられた人を再生させる。それは編集者時代につちかわれた植草甚一仕込みのプロデュース力と、時代を見抜く勘がそうさせるのだ。

読みながら「あの時代はやたらと楽しかったなあ」とわれながら胸が熱くなったが、この一冊は、「企画力をどうやって実現するか」という奥の手を公開している。単なる懐古本ではない。

自分の勘を信じ、綿密に構成して実績をつみあげ、かつ持続するのが高平マジックである。やせっぽちでシャイだった高平青年は、いまや白髪のハナモゲラ翁と化し、さらなる進化をとげようとしている。いまなお要注意人物による「問題の書」である。

※週刊ポスト2010年11月5日号

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