ライフ

タモリ、赤塚不二夫、清志郎と付き合った男を嵐山光三郎解説

【書評】『今夜は最高な日々』(高平哲郎著/新潮社/1785円)装丁・装画/和田誠

かつて雑誌『宝島』の編集長だった高平哲郎氏との交遊を通して、作家の嵐山光三郎氏が、その「時代を見抜く勘」について解説する。

******************************
高平哲郎が山下洋輔、坂田明、中村誠一、そしてタモリらとつきあいはじめたのは70年代である。その流れは赤塚不二夫をまきこんで80年代のバラエティー全盛時代に突入していく。

横澤彪プロデューサーとの連携でサブカルチャーの芸能をメインカルチャーに変えた手品師の総元締が高平氏である。ギンギンに凄腕で頭がキレル人物を想定するが、そのじつ温和で物静かで上品な紳士である。

高平氏はテレビ番組やステージの構成演出を手がけるいっぽう編集者であった。高平氏が雑誌「宝島」編集長だったころ、私も編集者だったからいわばライバルであった。手ごわい相手が現われたな、と用心していたのだが、その高平氏が構成する「笑っていいとも!増刊号」に出演して失業時代の生活を助けられた次第で、いわば私の恩人でもある。

この本に登場する人は、筒井康隆、篠原勝之、小野二郎、相倉久人、斎藤晴彦、忌野清志郎、日野皓正、春風亭小朝、林家三平、色川武大、桃井かおり、と多士済済で、その数は百名をこえるだろう。文庫本にするときは人名の索引を作っていただきたい。

驚くことは、高平氏が、時代の先端を行く人々のあいだをすりぬけていくバイタリティーである。疾走しつつマイナー系をメジャーに化けさせ、忘れられた人を再生させる。それは編集者時代につちかわれた植草甚一仕込みのプロデュース力と、時代を見抜く勘がそうさせるのだ。

読みながら「あの時代はやたらと楽しかったなあ」とわれながら胸が熱くなったが、この一冊は、「企画力をどうやって実現するか」という奥の手を公開している。単なる懐古本ではない。

自分の勘を信じ、綿密に構成して実績をつみあげ、かつ持続するのが高平マジックである。やせっぽちでシャイだった高平青年は、いまや白髪のハナモゲラ翁と化し、さらなる進化をとげようとしている。いまなお要注意人物による「問題の書」である。

※週刊ポスト2010年11月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン
ここ数日、X(旧Twitter)で下着ディズニー」という言葉波紋を呼んでいる
《白シャツも脱いで胸元あらわに》グラビア活動女性の「下着ディズニー」投稿が物議…オリエンタルランドが回答「個別の事象についてお答えしておりません」「公序良俗に反するような服装の場合は入園をお断り」
NEWSポストセブン
志穂美悦子さん
《事実上の別居状態》長渕剛が40歳年下美女と接近も「離婚しない」妻・志穂美悦子の“揺るぎない覚悟と肉体”「パンパンな上腕二頭筋に鋼のような腹筋」「強靭な肉体に健全な精神」 
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《還暦で正社員として転職》ビッグダディがビル清掃バイトを8月末で退職、林下家5人目のコンビニ店員に転身「9月から次男と期間限定同居」のさすらい人生
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された佳子さま(2025年8月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《日帰り弾丸旅行を満喫》佳子さま、大阪・関西万博を初訪問 輪島塗の地球儀をご覧になった際には被災した職人に気遣われる場面も 
女性セブン
鷲谷は田中のメジャーでの活躍を目の当たりにして、自身もメジャー挑戦を決意した
【日米通算200勝に王手】巨人・田中将大より“一足先にメジャー挑戦”した駒大苫小牧の同級生が贈るエール「やっぱり将大はすごいです。孤高の存在です」
NEWSポストセブン
侵入したクマ
《都内を襲うクマ被害》「筋肉が凄い、犬と全然違う」駐車場で目撃した“疾走する熊の恐怖”、行政は「檻を2基設置、駆除などを視野に対応」
NEWSポストセブン
山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン