ライフ

女子生徒色気づき男子生徒がおかしくなり学校乱れると教師

【書評】先生のホンネ 評価、生活・受験指導(岩本茂樹著 光文社新書 798円)
 
 現場の教師たちの「リアルなやり取り」を元教師が再現した著書を、精神科医の香山リカ氏が書評する。

 * * *
「先生のホンネ」。このタイトルを見たときに、すっかりこれは、モンスターペアレントや扱いにくい子ども、校長などの管理職、教育委員会や文科省、さらには自分の待遇などに対する不満といった“グチ”や、教員どうしの不倫ネタといった“ナイショの話”が満載の本に違いない、と思ってしまった。言い訳めいているが、これは私が医者で、教師同様、最近やたらと世間からの批判の矢面に立たされることが多い職業だからかもしれない。学校の先生たちのホンネのグチを読んで、「そうそう」と溜飲を下げることができるのでは、と期待してしまったのだ。

 しかし、本書はそんな本ではなかった。長年の教師経験を経て大学准教授になった著者は、「学校で同僚や生徒たちに囲まれ、教師はいったい何を考えているのか」という教師の心の本質になんとか迫りたい、と考える。そのために、ある高校を舞台に設定してそこの職員室での教師たちの会話を再現ドラマ風に記しながら、「そこで教師は何を考えたか」を丹念に分析していくのだ。そのリアリティがすごい。会議で、生徒が頭につけているカチューシャの色のことで大論争となり、「学校が乱れてくるのは女子からです。女生徒が色気づくと男子生徒のリズムが狂わされてしまう」なんて発言する教師、たしかにいそう。このままテレビドラマにしてほしいほどだ。
 
 最初は融通のきかない教師に「ムカつくなあ」などと思うのだが、著者の丹念な読み解きを見ているうちに、ちょっと考えが変わってくる。どんな教師でも、基本的には「子どものことを思って」と思っているようなのだ。では、なぜ極端なスタイルに走り、そこで硬直化する教師がいるのか。著者は、それは現代社会が「理想の先生」の出現に期待しすぎ、教師もそれにこたえようとしすぎるからではないか、と言う。

「教師ってさあ」と批判する前に、この現場の教師たちのリアルなやり取りにちょっと耳を傾けてほしい。少なくとも私は、教師を見る目がけっこう変わった。

※週刊ポスト2010年12月24日号

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」