国際情報

年収200万円中国人が2億円の家購入 大前氏バブル崩壊を危惧

 リーマン・ショック後の世界経済の回復を牽引したのは間違いなく中国経済だが、そこにはすでにバブル崩壊の影が忍び寄っている。果たして中国に何が起きているのか、大前研一氏が分析する。

 * * *
 いま中国のバブルは、先進国では見たことがないほど膨らんでいる。たとえばイギリスのオークションでは、18世紀後半の清朝・乾隆帝時代に作られた花瓶を中国人同士で競り上げ、最終的に北京の富豪が約56億円で競り落とした。予想価格は約1億3000万円だったというから、43倍の高値が付いたわけである。バブル期の特徴として、チューリップならぬニンニク価格の暴騰なども観察されている。

 最大の問題は不動産バブルだ。北京、杭州、上海などのマンションは2億~8億円もする。私は2010年11月、上海の浦東地区に高層マンションが立ち並ぶ高級住宅街を見に行ったが、何か寂しい感じがしたので、案内してくれた人に「この辺の住民はどうやって通勤しているんですか?」と尋ねた。すると「ここには誰も住んでいません」と言う。つまり、みんな投資用に買っているのだ。大連でも新築のマンションは、夜になっても全く灯りがついていない。これが全国至る所で見られる。

 いま中国の中間層には、マンションを3戸持つ人が増えている。1戸目、2戸目の物件が値上がりしているから、それを抵当に入れて3戸目を買い始めているのだ。結果、いま中国には空き室が8000万戸もあると言われている。

 日本のバブル期に日本人が買っていた住宅の価格は、年収の10倍ぐらいだった。ところが中国では管理職でも年収100万~200万円で、2億円の物件を買っている。なんと年収の100倍以上。空恐ろしい状況なのである。

 中国に、まだ家を持っておらず、これから買いたいと思っている人が山ほどいるのは確かである。だが、その人たちが家を買うためには、給料が上がっていかねばならない。

 これまでは政府が企業に年15%ずつ給料を上げさせてきたから、中国人はこの先も給料が上がると思っている。しかし、さすがにこれ以上、人件費が高騰したら外国企業は中国から出て行く。中国企業でさえ、ベトナムやタイ、インドネシアなどの研究を始めている。したがって今後の給料の伸び率は、せいぜい年4~5%に落ち着くだろう。

 となると不動産バブルは、どこかで弾けざるを得ない。いま中国人は集団心理で誰もがハイな状態になっているが、ふとしたきっかけでみんなが住宅を売り始めたら、その瞬間にバブルは消えてなくなる。

 中国政府は金融引き締めに政策転換したが、もはやソフトランディングはできないと思う。中央銀行の周小川総裁も金利を上げてインフレ退治をしたいと思ったら海外からドルキャリー(金利の低いドルを借りて利回りのよい国に投資する取引)が来て火に油を注ぐし、下げれば不動産投機が収まらない、どうすればよいのかとハムレットみたいな発言をしている。正直、打つ手がないと言っているに等しい。

※SAPIO2011年1月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン