国際情報

金正日の死で、中国は金正恩ではなく改革・開放派を支持する

金正日が急死する事態となった場合、現在の北朝鮮の権力中枢は大きく二つのグループに分かれると予想される。一つは、世襲後継者である三男の金正恩と、それを補佐する妹の金慶喜(党軽工業部長)、人民軍の李英鎬総参謀長を中心とする「先軍政治派」(現状維持派)である。

もう一つは、困窮する現状を打破すべく中国式の経済改革を求める「改革・開放派」と呼ぶべき党幹部グループである。そして鍵を握る中国は、どちらを支持するのか。ジャーナリストの惠谷治氏が分析する。

* * *
「先軍政治派」と「改革・開放派」の対立という権力内部の混乱に乗じて、住民たちが鬱積した不満を爆発させる可能性は小さくない。もしそうした反乱が全国へと発展した場合、それを鎮圧する任務を担うのは、人民保安部である。傘下の人民警備隊は国内の治安警備にあたるとともに国境や海岸、鉄道、さらには強制収容所の警備なども担当する治安機関だが、その対処の成否によっては、国内が大混乱に陥る可能性もある。

住民暴動の標的となる可能性があるのは、秘密警察(国家安全保衛部)や、鉄道・道路などの交通インフラ、アンテナ施設の通信インフラなどだろう。さらにはヤミ市などでの略奪・違法行為も頻発するかもしれない。

そうした北朝鮮の混乱を最も恐れているのは中国である。その中国は、先軍政治派ではなく、改革・開放派を支持するに違いない。そのため、北朝鮮が大混乱に陥った場合には、中国は、その筆頭格とも言える張成沢(金慶喜の夫で国防委員会副委員長)を押し立てて、改革・開放派政権を樹立させようと有形無形の支援を行なうのではなかろうか。

結果的に、中国に支援された改革・開放派によるクーデターが起きる可能性もある。その場合は、いわゆる二・二六事件のような青年将校らによる軍事クーデターとは全く異なり、権力委譲が進むだろう。

※SAPIO2011年2月9・16日号


関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト