国際情報

昨年10月の反日デモ 中国当局公認のやらせデモと断定

 中国で民主化運動が活発化している。ジャーナリストの相馬勝氏は、中国の民主化対策をこう読み解く。

 * * *
 温家宝首相は27日、中国で民主化運動が起きた場合に大きな原動力となるネットユーザーと対話し、「今後5年間で収入分配の不公平を解決することは、中国政府の大変に重要な任務だ。これは社会の安定にもつながる」と述べ、全人代で政府が所得格差の是正に真剣に取り組む決意を強調した。中国政府高官は、デモを警戒しつつも「中東諸国とは統治システムが違う。ジャスミン革命は中国では起こりえない」と語る。
 
 正反対の意見を説く者もいる。米国に亡命中の著名な中国人民主化運動指導者、魏京生氏だ。

「いま再び天安門事件のような民主化運動が起きても、中国指導部は軍に市民への発砲を命じるだけの勇気はない。100万人の民衆が街頭に出れば、人民解放軍ですら発砲はできない。中国民衆は勇気を持って、街頭に飛び出すべきだ」

 しかし、このような勇ましい呼びかけに応じる市民は少ない。北京市民の間では「中東の革命はみんな知っている。だが、いまの生活に満足しているし、逮捕される危険を冒してまでデモに参加するつもりはない」と様子見を決め込む向きが多い。仮に、魏京生氏が北京で民衆を扇動しようとしても、ついてくる市民がどれほどいるか疑問だ。皮肉なことに、発展する経済が民主化のブレーキになるという構図である。

 しかしそれは、中国では市民が民主化を望んでいないという意味にはならない。現に、体制に不満を抱いて、年間で10万件もの暴力事件が起こっている。治安担当者である時期最高指導者・習近平氏は、誰よりもそれを知っている。現在の一党独裁体制を維持しながら、どのように市民の民主化要求を満足させようかと考えているに違いない。

 中国ではすでに、田舎の村レベルで村長などを自由選挙で選ぶ限定的な民主化が実現しつつある。都市部でも地域レベルで民主化が容認される可能性もある。これは民衆の不満を抑えるための一種のガス抜きだ。これも中国の政治の常套手段である。

 思い出されるのは昨年10月、四川省成都など内陸部を中心に起こった暴徒化した民衆による反日デモの嵐だ。あのときは、党の最重要会議である党中央委員会総会の真っ最中に起こった。今回は全人代を前にして、厳しい弾圧が実行され、当局側はデモや集会を完全に封じ込めている。当局が本気を出せば、民衆がデモを実行できないことは今回の徹底的な封じ込めからも明らかだ。こう考えると、昨年10月の激しい反日デモは当局公認のやらせデモだったことは間違いない。

 同様に、近い将来、民衆の民主化要求気運が抑えきれなくなったとき、民衆の不満のガス抜きのために、突如として反日デモが起こることは、これまでの例からもありうる。習氏は昨年秋、反日デモの最中に開催された党中央委員会総会で、党中央軍事委副主席の座を掌中に収め、次期最高指導者の座を確実なものにした。北京の消息筋は「習氏は政治的野心のために反日デモを利用した」と指摘する。

 習氏は必ずしも反日的な思想の持ち主ではないかもしれないが、昨年の“成功”に味を占め、民主化を求める民衆の不満のガス抜きを目的に、再び反日デモを組織することも考えられる。

※週刊ポスト2011年3月18日号

トピックス

「公明党票」の影響で自民vs中道vs維新の三つ巴も(時事通信フォト)
【2・8総選挙「大阪11〜19区」の最新情勢】公明党の強力地盤「16区」で立憲出身中道候補の「維新逆転」はあるか 政治ジャーナリストが分析
NEWSポストセブン
司法省がアンドリュー元王子の写真を公開した(写真/Getty Images)
《白シャツ女性に覆いかぶさるように…》エプスタイン・ファイルで新公開されたアンドリュー元王子とみられる人物の“近すぎる距離感の写真” 女性の体を触るカットも
NEWSポストセブン
全米野球記者協会ニューヨーク支部主催のアワードディナーに出席した大谷翔平と、妻・真美子さん(左/時事通信フォト、右/提供:soya0801_mlb)
《真美子さんが座る椅子の背もたれに腕を回し…》大谷翔平が信頼して妻を託す“日系通訳”の素性 “VIPルーム観戦にも同席”“距離が近い”
NEWSポストセブン
なぜ実の姉を自宅で監禁できたのか──
《“お前の足を切って渡すから足を出せ”50代姉を監禁・暴行》「インターホンを押しても出ない」「高級外車が2台」市川陽崇・奈美容疑者夫妻 “恐怖の二世帯住宅”への近隣証言
NEWSポストセブン
東京拘置所(時事通信フォト)
〈今年も一年、生きのびることができました〉前橋スナック銃乱射・小日向将人死刑囚が見せていた最後の姿「顔が腫れぼったく、精神も肉体もボロボロ」《死刑確定後16年で獄中死》
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
【2・8総選挙「大阪1〜10区」の最新情勢】維新離党の前職が出た2区、維新前職vs自民元職vs野党候補の5区で「公明党票」はどう動くか
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト、2025年10月15日)
《頬がこけているようにも見える》高市早苗首相、働きぶりに心配の声「“休むのは甘え”のような感覚が拭えないのでは」【「働いて働いて」のルーツは元警察官の母親】 
NEWSポストセブン
ジェンダーレスモデルの井手上漠(23)
井手上漠(23)が港区・六本木のラウンジ店に出勤して「役作り」の現在…事務所が明かしたプロ意識と切り開く新境地
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン