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放置自転車を勝手に処分すると1年以下の懲役になる可能性も

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は、「ゴミ捨て場に放置された自転車を勝手に処分してはいけませんか?」と、以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 町内のゴミ捨て場の前に、古い自転車が乗り捨てられています。鍵もかかっていないし、持ち主の名前もわかりません。ゴミの回収車も持っていってくれないので困っています。市役所に電話しても対応してくれません。誰かが勝手に乗ったり、処分したりすると、法律的にはどうなるのでしょうか。

【回答】
 その自転車がゴミ(廃棄物)であれば、勝手に乗っても、解体処分しても法に触れません。しかし、落とし物や忘れ物である場合は、勝手に処分すると占有離脱物横領罪(刑法254条「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する」)に問われかねません。

 これは占有離脱物を自分のものにした場合に成立します。占有離脱物とは、持っている人(占有者)の意思に基づくことなく、偶然にその所持(占有)を離れて、誰も占有しない状態であることをいいます。忘れ物や落とし物がその典型です。
 
 捨てた物であれば、持ち主の意思によって占有を離れた、持ち主がいない物(無主物)になるため、占有離脱物ではありません。無主物として、拾った人が所有権を取得します。その場合、元の所有者は権利を失いますから、どうなっても何も文句はいえないということになります。とはいえ、世の中の物は大半が誰かの物です。「廃棄物だと思った」と主張しても、法律概念である「所有」の誤解に過ぎないとして、認められないことが多いでしょう。
 
 一方、誰が見ても廃棄物と思われる状態であれば、罪にはなりません。しかし、ゴミ捨て場にあっても古くなく、チェーンも復元できるなど捨てる状態でなければ、廃棄物なのかどうかは疑問です。全体に錆びつき、ブレーキも壊れ、後輪からタイヤが外れるなど、長期間の不使用が明らかな駅前の放置自転車について、無主物ではなく、遺失物として扱うべきだとする裁判例もあります。
 
 落とし物の場合は警察に届け出て、遺失物法の手続きに沿って処理するのが正しい方法です。そして警察が落とし物の公告後3か月しても持ち主が名乗り出なければ、拾得者の所有になります。

※週刊ポスト2011年4月8日号

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