国内

震災復興の巨大利権を狙い国交省、農水省ほかが続々動き出す

 予算の組み替え、仕分けでこれまで徐々に利権を削られてきたイメージのある霞が関だが、ここぞとばかりに「震災復興」を大義名分として、利権復活、省益拡大へ邁進している。ジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。

 * * *
 巨大な震災復興事業が始まるとなると、霞が関全体が「省益拡大のチャンス」と目の色を変えている。

 真っ先に動いたのが国土交通省だ。高速道路の「土日1000円乗り放題」や「平日2000円」の割引制度や無料化実験を見直し、被災地での道路復旧財源に回す方針を打ち出した。
 
「震災復興のためなら仕方がない」と思うかもしれないが、実は、津波でズタズタになったのはほとんどが自治体が建設した地方道で、高速道路と国道は、原発事故で作業ができない福島県の一部を除いて復旧している。

 民主党国土交通部門会議の議員がこう語る。
 
「高速料金割引の財源はまだ2兆円残っている。国交省はガソリン税の道路特定財源が“無駄な道路の原資”と批判されて一般財源化されて建設利権が縮小したため、この料金割引財源を昔のように道路建設に回したい。他の地方では新たな国道のニーズは減っているが、被災地なら大義名分があるから国交省直轄の復興道路をどんどん建設できると考えている」

 このタイプの利権復活は、民主党政権になって農業土木予算を大幅に減らされた農水省も狙っている。

 震災の被害が大きかった東北3県では2万haの農地が津波で海水につかり、瓦礫に埋もれている。農地の復旧には大規模な土地改良事業が必要で、同省は農業用ダムや排水施設の復旧、国が一時的に農地を買い上げて全額国費で土地改良事業を行なうなどの特別立法を検討している。こちらも「復興」を隠れ蓑にして、かつての利権を取り戻すために直轄建設事業を握ろうというものだ。
 
 また、厚生労働省は転職者用の雇用促進住宅(全国に約14万戸)に約4万戸の空室があることから、被災者を受け入れる方針だ。同住宅はサラリーマンが払う雇用保険料で建設されたが、「役所が住宅事業をやる必要がない」と廃止・売却方針が決まっていた。それを震災をテコに生き延びさせようというのだ。それならば被災した自治体に住宅の所有権ごと渡せばいいが、手放す気はなさそうだ。

 予算の復活や大規模な公共事業は被災地再生のためには欠かせない。だが、それが「復興のため」ではなく、「利権復活」に軸足が置かれれば、同じ公共事業でも、予算ばかり肥大化して無駄な事業が増えるという“いつか来た道”につながる。

※SAPIO2011年5月4日・11日号

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン