国内

天皇陛下の巡幸 4月下旬から茨城、宮城、岩手、福島の四県

「国や国民のために尽くす」――天皇陛下がこれまで度々会見で話された言葉が、今この震災下ほど深い実感をもって感じられることはない。ご高齢の身を押して、避難所へ、被災地へと回り、一人一人に腰を折り膝をついて話をされるその姿に、被災者たちからは感動の声が聞かれた。文芸評論家の富岡幸一郎が報告する。

 * * *
 四月八日、天皇皇后両陛下は福島県双葉町の住民約千四百人が避難している埼玉県加須市の旧騎西高校を訪問された。またそれに先立ち三月三十日の午後には、東京武道館に避難してきた人々を見舞っている。

 ついたてや段ボールで仕切られた床や畳にひざをつき、一人ひとりに声をかけられる天皇は緑色のジャンパー姿、皇后は青い上着を着ておられ、被災者の話を熱心に聞かれるその姿は、困難と悲しみに沈む人々に寄り添う姿勢そのものであった。

 天皇は被災した現地に一日も早く入って人々を励ましたいとの思いを持たれたが、被害甚大のさなか行けば警備などで負担をかけると判断され、まずは都内でのお見舞いとなった。

 家族が身を寄せる区画を一つずつ回られ「本当にご心配でしょう」「ご家族は大丈夫ですか」「夜は寝られますか」と声をかけられる天皇。乳幼児を抱える母親に「ミルクやおむつはあるの?」と質問され、子供の前でお手玉をされたりする皇后の優しいいたわりの思いに多くの人々が励まされ、感動のあまり涙を浮かべる人の姿もあった。

 両陛下は自ら身を低くされ座っている人々と同じ目線を合わせて、声をかけられる。その言葉と姿勢は、国民と共にある皇室ということをつね日頃から深く思い自覚されているからこそできるのだろう。

 四月十四日には、津波被害を受け十三人が亡くなった千葉県旭市の避難所二カ所を訪れた。両陛下が直接の被災地に入られるのは初めてであったが、出迎えた住民に「怖かったでしょう」「大丈夫ですか」と声をかけられ、津波で犠牲者が出た住宅跡の現場では並んで一礼をされた。

 公民館では両陛下が時に正座しながら避難者の話に耳を傾けられ、行き帰りの沿道でも住民の姿を見つけると車中で立って手を振る気遣いを見せられた。

 被災地への歴訪は、四月下旬から五月中旬にかけて茨城、宮城、岩手、福島の四県を順次回られる予定であるというが、これは今上天皇による平成の巡幸となるだろう。

 自然災害などの大規模な被害を受けた被災地に、励ましと復興の視察の目的で今上天皇が入られるのは、再訪もふくめると即位後十回以上を数える。平成三年の雲仙・普賢岳(長崎)では、現地の負担にならないようにと日帰りの訪問という強行スケジュールを選ばれた。そして、今回もそうであるように、避難所の床にひざをつき被災者と直接に向き合って励ましの言葉をかけられている。

※週刊ポスト2011年5月6日・13日号

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン