国際情報

福島原発事故 子供の被曝許容量はチェルノブイリの4倍相当

 東日本大震災の影響で発生した福島第一原発の事故。その国際的な基準に基づく事故の評価は、1986年に発生したチェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」に引き上げられた。いまだなお収束のめどが立たない福島第一原発事故について、チェルノブイリ事故直後から現地を取材し続ける『DAYS JAPAN』編集長で、フォトジャーナリスト・広河隆一氏がレポートする。

 * * *
 チェルノブイリ事故(1986年4月26日)のときは、原発から120km離れたウクライナの首都・キエフの子供たちすべてが、5月半ばから9月までの間、旧ソ連の各地の保養所に収容された。日本でも政府は国内の国民宿舎などすべてを借り切って、被曝が疑われる地域に住む妊婦と子供たちの収容に踏み切るべきである。

 それなのに、日本では政府が逆のことをやっている。福島市と郡山市の学校の土壌が放射能に汚染されていることを受け、政府は子供の被曝量の基準値を、毎時3.8マイクロシーベルト、年間20ミリシーベルトとした。これには国内からだけでなく、世界から猛烈な批判が出ている。

「20ミリシーベルト」という数字は、「国際放射線防護委員会(ICRP)」が、「非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベル」とされる<年間1~20ミリシーベルト>のもっとも高い数値であり、大人を対象にしていることはいうまでもない。

 それが特に子供たちにとっていかに高い被曝量であるかは、私の知る限り、チェルノブイリに汚染された土地のどの地域を居住禁止地区にするかについて、1991年にウクライナ議会が行った決定が参考になる。そこでは1平方キロメートルあたり15キュリー(放射能の旧単位)の汚染地域を立ち入り禁止地区とする、つまり居住禁止地区に規定したのだ。現在の単位に換算して、ここに住むと、年間5ミリシーベルト被曝してしまうという理由である。

 日本ではその4倍を許容量として、子供たちの学校の使用を許可したのである。また、「毎時3.8マイクロシーベルト」という数字は、いまは死の街となったプリピャチ市の数値とほぼ同じである。私はかつて5万人が住んでいて、いまや荒涼としたプリピャチの廃墟の中に、日本の子供たちが走り回る姿など想像したくもない。

◆広河隆一氏の最新刊『暴走する原発 チェルノブイリから福島へ これから起こる本当のこと』(小学館刊)は5月22日発売予定。

※女性セブン2011年5月26日号

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン