国内

バカ総理のバカ計画「1000万戸に太陽光発電」は絶対あり得ない

思い付きで“国際公約”するなど、もはや常軌を逸している。

菅直人・首相は5月のG8サミットで突然、「1000万戸に太陽光発電を設置する」と大風呂敷を広げて悦に入った。海江田万里・経産相が「聞いていない」と絶句し、後に仙谷由人・官房副長官が「夢は大きいほうがいい。『聞いてない』とかグチャグチャいわなくていい」と不真面目な言い訳で煙に巻くなど、またしても政府の体をなさない場当たり政治を露呈した。

ただし、このバカな思い付きは笑ってすませられるものではない。大きな問題点は4つある。第1に、そもそも政策として不適切だ。本誌はこれまでも太陽光発電による原発代替がいかに難しいかを科学的に分析してきた。

大臣すら聞いていなかった今回の計画は、菅氏に悪知恵をつけた経産省によれば「1戸あたり4kW×1000万戸=4000万kW」のパネルを設置するという計画で、これで“全原発の発電量の7割程度を家庭でまかなえる”ことになるという触れ込みだ。

もちろんウソである。原発が1基100万kW程度の「出力」であることは正しいが、「稼働率」が考慮されていない。原発の稼働率が現状でも(相次ぐ事故などで落ち込んでいるが)7割程度あるのに対し、太陽光パネルは12%しかない。したがって太陽光の4000万kWは原発に換算するなら6分の1(稼働率の比)に相当し、およそ6.7基分ということになる。

家庭用の4kWシステムの価格は約300万円なので、原発6.7基分を作るのに総額30兆円かかることになる。いくら脱原発が国民の願いだとしても、まともな政策とはとてもいえないのである。

さらにいえば、住宅はどんどん建て替えられる。パネルを常に1000万戸に設置しておくには、建て替えのたびに1戸300万円が必要で、これは未来永劫続く国民負担になる。

第2は、政治手法としての重大な問題だ。

国内で論議も提案もなく、突然、総理大臣が国際会議で「30兆円の公共事業計画」を約束してくることは暴走というしかない。もしこれが「30兆円かけて巨大ダムを300基造る」という話なら、マスコミはもっと叩いたはずだ。

第3には、憲法・法律に抵触する。

菅プランは一般家庭に政府が強制的に太陽光パネルを設置しようという前代未聞のものである。個人宅を勝手に徴用し、憲法が保障する財産権を侵す行為である。これも、もし「全家庭のベランダに小型発電機を置きますのでよろしく」という政策だったらどうかと想像すれば、異様さにすぐ気付くだろう。左翼独裁政権でもなければ、とても思い付かない暴挙である。これを「夢が大きくていい」などという人物が人権派弁護士を気取るとは驚きだ。

第4に、技術的に計画遂行は無理である。

前述のように、経産省の“試算”は、一部の太陽光信者と同レベルのデタラメな代物だが、その数字さえも現実を見ていない。

日本には2700万戸の民間住宅があるが、同省がそのうち1000万戸にパネル設置可能とした根拠は、耐震基準調査である。全家屋の約3分の1がパネル設置に耐えられる耐震基準を満たしているというのだが、裏を返せば3分の2の住宅は設置ができないわけで、それくらいパネルは耐震性を損なうものなのだ。

設置可能とされた1000万戸のうち、いくつで事故が起きるだろうか。すべてが無事故ということはあり得ない。現に、今でも耐震基準に問題ないとされた住宅がパネルの重みで歪む、あるいは地震で損壊する被害は出ている。

地震だけではない。日本の国土の約半分は豪雪地帯である(豪雪地帯対策特別措置法による)。耐震基準ギリギリの家屋にパネルを設置し、その上に雪が積もれば危険このうえない。また、そうしたパネルは1年の3分の1くらいは雪の下だから発電効率は前記の12%よりずっと低くなる。しかも雪の重み、低温、湿気などでパネルの損傷は他地域より激しい。

こんな問題だらけの計画を大威張りで発表する総理大臣のバカさ加減には、もはや付ける薬もない。

※週刊ポスト2011年6月17日号

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