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官僚のいいなり「ポチ記者」誕生の背景を中日新聞副主幹解説

 大震災と原発事故は、ジャーナリズムのおかしさも露わにした。政府の誤った事故情報をタレ流し、菅政権の情報操作に加担までする。既存メディア全体が、「原発記者クラブ」と化したのだ。そうした中で、ツイッターで「新聞のあり方」に疑問を呈す東京新聞・中日新聞論説副主幹・長谷川幸洋氏とジャーナリスト・上杉隆氏が対談。政治家や官僚に餌付けされた「ポチ記者」はいかに生まれるか、そのメカニズムを明らかにする。

 * * *
上杉:自分のことを信じてない記者の書いてる記事を読まされる読者は不幸です。それは、読者に対する裏切り以外の何ものでもない。長谷川さんは官僚のいいなりになる記者を、「ポチ」と呼んでますよね。

長谷川:「ポチ」になるには、それなりに能力がないといけないんです。まず官僚がいいたいこと、宣伝したいことをちゃんと理解できる。そこそこ、しっかりした記事も書ける。しかも、サボらず官僚とうまく付き合える。そういう記者を官僚が選んでいるんです、記者クラブの中から。

 それで「こいつはいい」と思うと、ちょっとエサをあげる。エサ、つまりネタですね。エサをあげると、記者はぱくぱくと食いついてくる。この記者はエサをちゃんとそれなりの記事に仕立てていく能力があるな、と。

上杉:官僚が認める。

長谷川:「こいつは能力があるな」と認めると、だんだん大きなエサをやるようになる。政治や経済を取材している記者はみんな、政府の決定事項を書いた紙を欲しがるから、今度はその紙をやる。

 で、それをちゃんと一面トップに仕立てられたら、こいつは会社の中でもそれなりの評価を得ていて、書く記事が一面トップになるんだな、と。そうすると「お前は立派な記者だな」ということになって、めでたくポチが誕生する。

上杉:霞が関のスピンコントロール(情報操作)にうまく乗っかる人は、日本でいうと、優秀な記者になる。でも海外では、それこそ国民とジャーリズムに対する裏切り者になる。

 今回の原発のことだって、既存メディアは政府・東電のいうとおりに全員書いたために、結果、多くの国民を被曝させたんですから、たとえ低線量でも。

 要するに、権力側に対して吠えるんじゃなく、自分たちも権力側に立って、読者とか国民とか、あるいはフリー記者とか海外メディアに対して吠えてるから、ポチなわけですね。

長谷川:いったんポチになると、怖がってしまうんですよ。官僚が何人もの記者の前でしゃべったことでも「オフレコ」っていわれたら書かない。政治家が「首相は解散する」ってブラフ(脅し)でいってるとわかっていてもブラフとは書かない。そのまま書いてしまうと、しゃべってくれた政治家や官僚に嫌われるんじゃないかとビビっちゃう。もうネタにありつけないかもしれない、と。

上杉:もう、ただのヘタレですよね(笑い)。

長谷川:ところが、僕も経験あるし、上杉さんも経験あると思うけど、書いても、ほんとは平気なんだよね。

上杉:平気ですよ。だって、今の民主党の番記者、たとえば官房長官番の記者より僕のほうが、枝野さんと付き合いも長く深いのに、がんがん批判を書いてるんですから。それでどうなるかっていうと、まあ、一時は駄目でしょう、1年ぐらいは。

 でも、人間関係は変わってないから、状況が変わればまた戻ることもある。僕は枝野さんのためにジャーナリストをやってるんじゃなくて、読者のために書いてるわけだから、それはビビってる記者がおかしいんですよね。その程度で壊れる人間関係は大したもんじゃないのに。

※週刊ポスト2011年7月8日号

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