国内

市場原理無視のTV局 放送開始58年で倒産、合併、買収0件

 電波を県域内に限定した「県域免許」の導入により、政府は地方TV局および、局を経営する地方紙をコントロールする構造を確立した。その結果として、テレビ・ジャーナリズムが正しい情報よりも、権力にとって都合のいい情報を流すことに腐心してきた構造的堕落は、非常にわかりやすい。

 政・官にとって衛星放送やケーブルテレビが発展してもらっては困る事情はそこにある。地上波がやらない「自由な報道」や「権力監視」を新しいメディアが始めたら非常に困ることになるからだ(現にいまや政府の規制を恐れないネットメディアが次々と政府と大メディアの嘘を暴き出している)。

 テレビを地上波に固定化し、睨みの効くキー局発信の情報が全国に行き渡る県域免許こそ、テレビを「権力の道具」にするために不可欠だったのである。

「そんな政府の意向は、テレビ事業を地上波で独占して利益を確保したかったテレビ局にも都合がよかった。たとえば、地上波のライバルになるBS放送は、総務省とテレビ局があらかじめテレビ局の子会社でBS放送を占拠できるように枠組みをつくってからスタートさせた。政治と一体化して利権を確保してきたのが日本のテレビです」(地デジ化政策に詳しい政策研究大学院大学・福井秀夫教授)

 地上波放送が始まって58年経つが、1局も倒産や合併、買収がないことは他業態ではありえない(イトマン事件で詐欺被害に遭ったため倒産した近畿放送は例外)。市場原理も国民利益も無視した電波メディアの「護送船団」がいまだ貫かれているからだ。

※週刊ポスト2011年7月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
東条英機・陸軍大将(時事通信フォト)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最低の軍人」ランキング ワースト1位はインパール作戦を強行した牟田口廉也・陸軍中将 東条英機・陸軍大将が2位に
週刊ポスト
昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン