国内

朝日、読売を国税狙い撃ち「財務省には逆らえない」と幹部談

 財務省の強さ――それは国家の予算を握っていることだけでなく、情報収集力と組織の結束の強さこそ、官僚主導政治を根付かせてきた秘密だろう。財務官僚たちの影響下にあるのは民主党政権だけではない。彼らは政・官・司・財・報に幅広く支配の手を伸ばしている。

 政権交代をはさんだこの数年、財務省が最も力を入れてきたのが「第4の権力」であるメディアへの工作だった。

 財務省が本格的に増税に向けたメディア工作をスタートさせたのは、「消費税増税なしで財政再建できるとは考えられないし、安心できる社会保障制度も成り立たない」と消費税増税路線を鮮明にした福田康夫首相の頃とされ、世論工作の司令塔を長く務めてきたのが「財務省の天皇」の異名を持つ事務方トップの勝栄二郎・事務次官の直系とされる香川俊介・官房長だ。

 若手官僚を中心に組織された100人規模の政界工作部隊は、香川氏の指令ひとつでメディア工作部隊にも変身する。それをバックアップするメディア対策専門部隊もある。

 東京・竹橋の大手新聞社の本社に近いエスニック料理店は、財務官僚がベテラン記者や編集幹部、評論家などと勉強会を開く際によく使う店の一つだ。常連というベテラン記者の話である。

「飲食費はワリカン。財務官僚の守備範囲は財政政策だけではない。バックグラウンド・ブリーフィングといって、例えば『エリート教育について取材したいと考えている』といえば、調査課などから関連資料やデータを一式取り寄せた上で、霞が関での議論や問題点を非常にわかりやすく説明してくれる。ブレーンストーミングですね」

 それを自分でやるのが記者の本来の仕事のはずで、昔は、資料一式役所が用意した記事は「もらい記事」と呼ばれて恥とされた。だが、政策が嫌いな政治部記者や、不勉強で専門知識がない経済部記者は、財務官僚のサービスを有り難がって役所に頼りきりになる。

 メディア工作部隊の幹部には、キャリア官僚ながら玄人はだしの「手品」を演じる課長クラスや「腹話術」を得意芸とする審議官クラスもいて、記者たちを絡め取る。そして会合のたびに記者たちに、「野田さんはああ見えて政策にはかなり詳しいね」とささやくことで、大メディアに「政策通の政治家」と報じさせる。これぞ正真正銘の腹話術だ。

 だが、大メディアが増税必要論を一斉に報じるようになったのは、個々の記者への工作だけが理由ではない。財務省の報道機関工作の有力な武器となったのが、国税の税務調査である。

 朝日新聞は2009年2月に東京国税局の税務調査で京都総局のカラ出張による架空経費の計上など約5億1800万円の申告漏れを指摘され、東京、大阪、西部、名古屋の4本社編集局長と京都総局長を処分した。同年5月には、読売新聞東京本社も東京国税局の税務査察で推定2億7000万円の申告漏れを指摘されている。その前には日テレ、フジテレビ、NHKも申告漏れを指摘された。

 時系列でいえば、税務調査の後、読売は丹呉泰健・前財務事務次官を社外監査役に迎え、朝日も「増税礼賛」の論調を強めていく。

 有力紙の論説委員は、「メディアは常に税務当局に狙われている。経営上も財務省に逆らえない」と本音を明かす。

※週刊ポスト2011年10月7日号

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン