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イチローが速球に対応できなくなったことを示すデータ登場

11年連続200本安打の夢は儚く消えた。シアトル・マリナーズのイチローは合計184本で今季最終戦を終え、「なぜか晴れやか」と言い残して球場を後にした。これまで数々の記録を塗り替えてきた稀代の天才打者に何が起きたのか。かつてイチローは、近しい人物にこんなことを語っていたという。

「人間の体は26歳の誕生日までは成長できるが、30歳からは安定期に入り、35歳を過ぎれば維持する時期になる」

その言でいけば、今年の10月で38歳になるイチローは“維持するのがやっとの時期”に入っているのかもしれない。11年連続となる200本安打を達成できなかった現実に、天才打者・イチローの衰えを感じるファンも多いのではないか。本当に「天才イチロー」は“死んだ”のか。本誌は野球を統計学的に分析する「セイバーメトリクス」を用いて検証した。

MLB選手のデータ分析を手がける米国「FanGraphs」が発表した、イチローの球種別打撃内容を数値化したもの(0をMLB選手の平均値とし、プラスになればなるほど、その球種から安打を放っていることを示す)によると、ファストボールの数値が2009年の「18.9」から2010年は「-0.9」に、そして2011年は「-16.7」に急降下。

このほか2011年のイチローの場合、スライダー、カットボールといった、一般的に140キロを超える速球系の値がすべてマイナスとなっている。逆に、カーブ、チェンジアップなどの遅球系に対しては例年通りの数字を残している(たとえばカーブの場合、2009年は5.9、2010年は-0.3、2011年は5.4)。つまり、メジャーの平均的打者よりも、イチローが速い球を打てなくなっているのだ。

選球眼も低下した。ボール球をスイングする確率(O-swing%)は、過去5年間(2006~2010年)は平均29.7%だったが、今年は36.3%に上昇している。加齢と共に動体視力が低下することは証明されている。日本損害保険協会の資料によると、人間の動体視力は40歳手前から低下が始まり、50歳を超えると急激に下がることが示されている。38歳を迎えるイチローの動体視力が落ち、速い球に対応できなくなっているとしても、決して不思議なことではない。

※週刊ポスト2011年10月14日号

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