国内

鉢呂前大臣「死の町でなくゴーストタウンといえばよかった」

震災から7か月。チェルノブイリに比して34倍の放射線量とされる福島第一原発の地元・双葉町。この町を「死の町」と呼んで、その後経済産業大臣の職を辞した鉢呂吉雄前大臣に、作家の山藤章一郎氏が話を聞いた。

* * *
県道沿いの雑木林の際に、プレハブが並んでいる。6棟48世帯が暮らす南相馬市の応急仮設住宅である。駐車場に車は停まっているが、ここにも人の姿はない。

だが目を凝らすと、雨降りの暗いガラスの向こうでテレビの明かりがちらちらしている。

9日で大臣を辞任した鉢呂氏も人影のないこの南相馬市を視察した。辞任の4日後、議員会館で話を聞いた(以下「 」内は鉢呂氏の談)。

「ぼくの素直な気持ちでね、あの言葉しか浮かばなかった。ことにバスで20分ほどまわった原発の地元は『死の町』としかいえないものでした。『ゴーストタウン』といえばよかったのかな。

県知事、南相馬市の市長、双葉町長など14市町村の長と話して、除染の問題を中心に、福島の再生なくして日本の元気はないという思いを強くしたんです」

今回の非難は的外れで醜怪な騒動だった。煽り新聞テレビが背中から斬りつけ大臣のクビが飛んだ。

記者会見を一部抜粋してみる。

私(鉢呂)は、事故現場、除染地域を朝6時から夜11時までまわってきた。厳しい状況だが、現場の作業員、管理の方々、思いのほか明るく働いておられて感謝する。

そしていう。

「残念ながら周辺の町村の市街地には人っ子ひとりいない、まさに死の町という形でございました」

しかしながら、この困難な事態を改善に結びつけていくよう政府は全面的にバックアップする、と。どういう支援か。

「たとえば1日3時間なら3時間、防護服を着て放射能に強い作物を育てる〈通い作〉など、安全の度合いを測りながら、農業や経済活動ができないものか。

先週、横路衆議院議長がチェルノブイリを訪問して事故現場400メートルまで行ってきた。彼がいうんです。25年経ったけど、3キロ圏内に帰る目処はまだ立っていないと。福島はそこまで待てません。

英知を集めて、除染する。『死の町』については感情を害した人がいるわけだから、素直に謝ります」

※週刊ポスト2011年10月14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン