ライフ

住宅販売の現地案内所で払う“証拠金”は手付金とは別の物

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「家を買うのに、手付金は必要ですか。買うのを辞めた場合はどうなりますか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 建築業者が販売する新築住宅を見に行きました。よさそうな物件があり、決めようと思いましたが、家族にも相談する必要があるので、決めずに帰りました。このような場合、少しでも手付金を入れておく方法があると聞きましたが、もし買うのをやめた場合、手付金はどうなるのでしょうか。

【回答】
 現地案内所などで授受されるのは、「申し込み証拠金」という比較的少額のお金です。買い受けの決心がつくまで契約の優先権を確保してもらうためにお金を預けるのです。そして、将来買うことになったときに代金の一部になります。この段階では契約は成立していませんから、買うのを断念すれば、お金を預けておく理由はなくなり、返ってくるのが普通です。

 ただし、いつまでも優先権は確保できず、一定の期間内に確答しないと効力を失います。また返金についても業者によっては没収の扱いもあるようですから、申し込み証拠金を渡す時には、その条件を十分確認する必要があります。

 一方、「手付金」は売買契約が成立したときに授受されるお金です。手付には契約成立を証する証約手付、買主が違約したときに賠償として没収する違約手付、手付損・倍返しで解約できる解約手付の3種類があります。どの手付になるかは当事者の合意によりますが、民法では、合意がないときは解約手付と解され、売主は手付の倍額を買主に渡すことで、買主は手付を放棄することで、契約を解除できます。

 しかし、建売分譲業者との売買では宅建業法が適用になり、業者が売主の場合、どの種類の手付であっても必ず買主側にとっての解約手付の性質があるとされています。ただし、解約手付であっても、買主が代金を用意して受け取りを促したり、売主が登記等の準備を整えて引き渡しを申し出るなど、契約実行に着手すると、解約はできません。

 また、宅建業法では、手付は代金の2割が限度とされています。このほかに宅建業者の事務所や一定の要件を備えた案内所などの場所以外で契約したときには、買主がクーリングオフできる特例も定められています。

※週刊ポスト2011年10月21日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン