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ひき逃げ放置事件 中国では「見て見ぬふり」が当り前の風潮

「二人不看深井」。中国にはこんなことわざがある。直訳すると「2人で井戸を覗くな」。1人が井戸に転落したときに、もう1人が必ず疑われる。面倒になりそうなことにはかかわるなという意味だ。

10月13日、中国・広東省仏山市で起きた轢き逃げ事件は、まさにこのことわざをいい当てたような一件だった。車に轢かれ、路上で倒れている2才の女児を、18人もの通行人が見て見ぬふりをして放置したのだ。19人目の女性がようやく女児を抱えて移動させた。その後、女児は病院に運ばれたが、9日後の21日、多臓器不全のため亡くなっている。

現場近くにあった監視カメラが事件の一部始終を収めていて、その映像がネットで流れると、その許すまじきむごたらしさに、世界中から驚きと怒りの声があがった。

中国では、昔から見て見ぬふりが当たり前という風潮があるようだが、近年では裁判にまで発展するケースもあり、ますますその行動に拍車をかけている。

2006年11月、江蘇省南京市で、バス停で転倒して骨折した高齢女性を、通りかかった男性が心配し、病院へ運んだが、その女性が「骨折したのは男性に突き倒されたからだ」と主張して裁判沙汰に。結果は、なんと男性側の敗訴。約4万5000元(約54万円)の賠償が命じられたのだ。

さらに2009年11月にはこんな一件も。重慶市で中学生の男子が、街で倒れていた高齢者を助けたところ、「お前が倒した」として因縁をつけられた。裁判沙汰になったが、目撃者の証言も多数あって、原告側が訴えを取り下げたが、この男子は、両親に「人助けなんてするもんじゃない」と嘆くようになったという。

善意を仇で返す国民性にはただただあ然とするばかりだが、へたに人を助ければ加害者扱い。しかもお金まで要求されるとあっては、人助けに二の足を踏むのも無理のないことかもしれない。だからといって、轢き逃げされたまだ幼い2才の女の子に気づいていながら放置するというのは、人としてとうてい許されることではない。だが、この正直者が損をするという風潮は、中国の歴史が証明をしているから、その考えを変えるのは難しいと、中国に詳しいライターの田中美奈氏は話す。

「歴史を遡れば、中国ではさまざまな国や民族が勃興し、その都度、時代の大転換がありました。そんな中で“信用できるのは自分と身内と金だけ”という考え方が強くなったんです。日本のようになんとなく平和に生きてきた国ではないんです」

※女性セブン2011年11月10日号

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