国内

大阪の反・君が代教師粛清で「採用拡大か」と教員志望者期待

大阪のW選挙で大阪維新を掲げた橋下徹氏が圧勝、その一方で想定外の大敗を目の当たりにして、大教組(大阪教職員組合)関係者の選挙中の悲壮感は「悲観」に変わっていた。 大教組関係者はこう漏らした。

「W選挙では橋下阻止のために我々が活動したことは否定しない。教育の自由を守るための行動だ。だが、敗れた今となっては、いくら“教育の自由”を叫んでも府民は関心を持たない。今後は“一公務員”として耐えていくしかないのか」

橋下氏が率いる維新の会は、政治主導で教育改革を図る「教育基本条例」の成立をW選挙の公約に掲げた。同法案は去る9月に市議会で廃案となったが、橋下市政で再提案されるのは確実で、橋下後継となった松井一郎・府知事も、府議会での年度内成立を明言した。

法案の“肝”は、教員の人事評価や指導力不足教員の整理など、教師の身分保障に踏み込んだ点にある。評価を行なう校長や新設の「学校協議会(※)」の委員を外部登用するなど、“無能教師”の追放が可能になるとされ、「君が代斉唱」を拒否する教員も処分対象となる。

だが、大教組に動揺が広がる一方で、主戦論を唱える勢力も健在だ。府立高のベテラン教員は、徹底抗戦の構えを見せる。

「最初に白旗を揚げたら、ずっと言いなりになってしまう。デモや署名で世論を盛り上げ、議会で条例を廃案に追い込むつもりです。国歌斉唱はしない。私みたいな教師は遅かれ早かれクビ。でも、教員をいっぺんに大量解雇すれば、教育再生どころか大阪の教育はストップする。そこまでの覚悟はないでしょう」

だが、“戦争”なら橋下市長のほうに一日の長がありそうだ。橋下氏の政策ブレーンの一人にベテラン教員の発言をぶつけると、「ぜひ、そうしていただきたい」と笑みを浮かべた。

「教職員が“いい子”に変わってしまうと一番困る(笑い)。面従腹背の者をクビにするにはいろいろと理屈が必要になるからです。

多くの人が勘違いしているが、橋下さんの狙いは、教員に君が代を斉唱させることではなく、教える能力のない教師に退場していただくということ。極端な話、“丁寧な授業をする先生なら、君が代を歌わなくてもいい”とさえ考えている。そんな教師は滅多にいないと思いますけど……」

こうした橋下手法に賛否はあるが、大阪の教育が“お寒い状態”なのは事実だ。

全国学力テストでは、大阪は小学校・中学校ともに全国平均を大きく下回り続けている。そこで橋下氏は「危機感と競争意識を教員に持たせなければならない」と、学力テストの学校別成績の公開を掲げ、“子供たちの学力を向上させられない教員はいらない”との姿勢を崩さない。

橋下氏の強気を支える理由がある。

「この不景気の中、一昔前は給料の高い民間企業に就職していた優秀な学生の間で教員志望が強まっている。だが、採用枠が少ないために、免許を持ちながら教壇に立てない“教員待機者”が全国に溢れている。橋下氏はそうした人材を採用しようとしている。だから大量解雇しても困らない」(文科省OB)

すでに教員志望の学生の間では、選挙結果を受けて「大阪府の採用枠が拡大されるからチャンス」との噂が駆け巡り、「校長の公募にも民間から優秀な人材が名乗りを上げている」(府庁関係者)という。時ならぬ“教員志望バブル”が起きようとしているのだ。

「教員の大幅入れ替えをすれば大教組の組織率はさらに下がる。部活動の指導にも熱心な若い先生を採用したほうが、よほど子供のためになる」(前出のブレーン)

※学校協議会/府立高等学校及び府立特別支援学校に設置が義務づけられる、保護者及び教育関係者(当該学校の教員及び職員を除く)の中から校長が委嘱した委員で構成される会。学校長の求める事項について協議し、学校運営に関し意見交換や提言を行なうほか、部活動等の運営、校長・教員の評価、教科書の推薦等の権限を有する。

※週刊ポスト2011年12月16日号

関連キーワード

トピックス

麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン