国際情報

「米大統領選の行方は拉致被害者問題にも影響」と落合信彦氏

「2012年11月6日」を境に、世界はどう変わるのか? アメリカ大統領選挙の投票結果には、世界中からの注目が集まる。一国の国家元首を決めるだけでなく、日本を、そして世界を一変させかねない選挙戦は、既に始まっている。落合信彦氏は、選挙戦をこう読み解く。

* * *
今回の選挙で民主党と共和党、どちらが勝利するかによって、世界は大きく変わる。最大の争点となるのは経済と外交だと私は見ている。どちらもオバマが失敗を重ねている分野だ。経済が争点となるのは大統領選の常だが、外交は身近でないイシューなので通常は票につながりにくい。

ただし、2012年は違う。世界第2位のGDPを持つこととなった中国の台頭が著しい中で、太平洋を支配する国家としての力を保てるのかその点について、アメリカ国民の関心は非常に高い。

オバマが再選されれば、内向きの収縮スパイラルが続き、中国の権益拡大は止まらないだろう。一方の共和党は、伝統的に強気の外交を行なうことで知られている。ソ連を「悪の帝国」と断じたレーガンを思い出せばわかりやすい。今回の候補者で言えば、ギングリッチのはっきりとした口調からは、外交でアメリカが世界をリードしていく、という意志が感じ取れる。

これは日本の国益にも深く関係してくる。中国の覇権主義に対抗する上で、日本の地政学的な重要性は増す。うまくすれば日本の国益を拡大するチャンスとなるのだ。北朝鮮から5人の拉致被害者を取り戻した時に、アメリカが共和党政権だったことを思い出すべきだろう。一方、オバマ政権下では、拉致問題は遅々として進まなかった(もちろん日本政府がなんのアクションも起こさなかったのが大きな理由だが)。

経済の面でも、オバマの「富の再配分」による「格差是正」という名のソーシャリズムがさらに進められるのか、共和党が正しい競争社会となるアメリカを復活するかが選択されることになる。

ギングリッチは「児童労働」の必要性を主張していて、批判を浴びている。しかし、彼は何も子供を炭鉱で働かせろと言っているわけではない。学校の図書館の整理や掃除といった仕事に賃金を発生させるのである。

カーネギーやロックフェラーといった、現代アメリカの礎を築いた実業家たちは、貧しい子供時代から身を興した。「アメリカン・ドリーム」は正しい競争社会からしか生まれない。もちろん、正しい競争によってアメリカ経済が活力を取り戻すことが、世界経済の底上げにつながることは言うまでもない。

こうした問題意識を持ちながら大統領選を見ていけば、様々な発見があるはずだ。長い選挙戦ではあるが、刻々と変わる情勢を、ぜひ注視し続けてもらいたい。

※SAPIO2012年1月11・18日号

関連記事

トピックス

2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
若隆景
序盤2敗の若隆景「大関獲り」のハードルはどこまで下がる? 協会に影響力残す琴風氏が「私は31勝で上がった」とコメントする理由 ロンドン公演を控え“唯一の希望”に
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン